(29は間違えの投稿です。すみません。以下に差し替えてください。)
最初の数回は毎週教会に出かけた俺だったが、信心深い方ではないので、そのうちに気が向けば行く程度になっていた。
だが、妻の方は毎週欠かさず夜の集会に行っていたし、昼間も時々は清掃作業などの奉仕活動に行っていた。その妻によると、
教会の後ろに宿泊所があり、教祖は十数人の巫女と呼ばれる女性たちと生活しているのだそうだ。年齢は20歳くらいから50過ぎまで。
彼女たちは交代で教祖様の身の回りの世話をしているというのだ。また月刊誌の作成、信者からの悩みの相談、礼拝の準備なども
しているようだ。驚いたことに女性の中には夫もいる女性が何人かいるのだという。俺はハーレムという言葉が危うく出そうになったが、
妻の前では止めておいた。こういう話は人が思うほど、いやらしい話ではないのかもしれない、とその時はまだ思っていた。
夜の集会にしても、世界の中には裸で生活する種族もいるくらいだ、限られた時間、裸族の真似をしても大したことではない、
と無理に思おうとしていた。そうは言っても、高校生の少女と裸で抱擁するのは宗教儀式なら有りなのか、という疑問は払しょくできなかった。
それに妻と裸で抱擁していた痩せた爺さんは、妻の話だとしっかりと勃起していたらしい。まあ、俺の信心が足りないせいで
物事がいやらしい方に見えているのかもしれないが。だが、俺の考えは楽観的すぎることが直ぐにわかった。それは、ある夜に
妻が言った言葉からだった。
「私ね、巫女になる見習いをすることになったの。来週は教会に泊まるから、美紀(娘)のこと、お願いね。」
俺は再び置かれた難しい状況を、その時すぐには把握できなかった。
次の週、夜の集会のあと、妻は宿泊所と呼ばれている3階建ての建物の中へ消えていった。深夜の1時過ぎ、どの部屋も煌々と灯りが
灯っていた。俺は1泊か2泊だけの宿泊だと考えていた。翌日、すなわち日曜の午後、俺は妻の携帯に電話した。何度電話しても出ず、
夕方になってようやく妻に繋がった。
「どうしたの。なかなか電話に出ないじゃないか。」
「今日は忙しくて。教会に届いてる郵便物の整理でしょ。床掃除でしょ。今夜は踊りの練習もあるのよ。」
「踊り?」
「うん。巫女になるには踊りも習うのよ。」
「そう。今夜もそっちに泊まるのね。」
「うん。美紀ちゃんどうしてる。宿題ちゃんとしてる?」
「やってるみたい。」
そんな会話をして、俺は電話を切った。妙に元気のよい妻の様子が俺は気がかりだった。
娘と二人だけの夕食を食べた後、夜9時ごろ再び俺は電話した。すぐに妻は電話に出た。
「どうしたの?」
「何をしてるのかな、と思って。」
「今、踊りの練習が済んだところ。いやー、難しい、難しい。私、昔はダンス得意だったけど、それとはだいぶ違うわ。」
「これから、どうするの?」
「教祖様の部屋で何かあるらしいわ。」
「何か、て?」
「お祈りみたいなことじゃないかな。からだのツボにノボの力を与える、て聞いた。」
「ノボ?」
「わかんない。また、後で話すね。もう行かなくちゃ。じゃあねー。」
そう言って電話は一方的に切れた。俺は妙な胸騒ぎがして11時ごろにもう一度電話したのだが、電源が切られた状態だった。
翌日の午後、俺は職場から妻に電話した。
「今夜は帰る?」
「うん。帰ることにした。教祖様が帰ってちゃんと家族に話してきなさい、ておっしゃるの。本当はね、巫女になるのは
最低でも3か月は宿泊所に泊まって修行しないといけないの。だけど私の場合は小学生の子供がいるから、特別に月1日は
帰っていいって。」
「つ、月いち・・・・」
「心配しないで。私、とっても調子がいいの。教会のある場所がいいみたい。宇宙から最初に来たムルメン様の先祖が
降り立ったのがこの場所なんだって。きっとなにかのエネルギーがこの場所にあるんだわ。」
「昨日の夜言ってた、何とかのツボ、ていうの、あれ何?」
「ノボの力のこと?普通だよ、ツボに与える力だよ。」
「わかんないよ・・・」
「今晩帰るから、そのとき話すワ。じゃあね。」
最後はちょっと不機嫌そうに妻は電話を切ったのだった。俺はますます憂鬱になっていた。
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