その出来事があって3か月が経った。結局部長は帰らぬ人となった。心臓突然〇と言うらしい。元気な人だと思っていたが、体調が悪くても検査を
受けたがらなかったようだ。妻は落ち込んで泣いていることが時々あった。部長は倒れる直前に妻の中に射精したというのだ。その感覚が忘れられず、
苦しんでいるのだった。自分のせいで部長は〇んでしまったと口に出して言ったこともあった。さらにショックなことが起こった。妻の生理が止まって
部長の子を妊娠してしまったのだ。部長にはあらかじめ危険日だから外出しにしてと、妻が頼んでいたのだが、突然起こった心臓発作でかなわなかった
ようだ。残念だが妻には産まれる子を育てる勇気がもてなかった。美鈴さんに相談すると自分が育てるという。ぜひ産んでほしいと妻に懇願した。
妻はそれを承諾した。美鈴さんは一人ぼっちになって不要になった大きな自宅を処分して、俺たち夫婦の家の近所のマンションに引っ越してきた。
産まれた子に妻の母乳を与えるてもらうためでもあった。
こうして39歳の妻は男の子を出産した。子供が歩き始めると、美鈴さんは収入を得るため、以前していた水商売に復帰した。クラブのママになったのだ。
夜間営業の託児所に子を預け、夜の仕事を始めたのだった。
だが妻の心は沈んだままだった。クリニックにも通ったが改善せず、小学6年の娘の美紀も暗く落ち込んだ母親を心配している様子だった。
そんなある日、妻が俺に相談があると言って、久しぶりに明るい表情で話し始めた。
「私ね、入信したの。」
「ニュー・・・・シン?」
「神様のことよ。すばらしい人に出会えたのよ。」
えええー。驚く俺に妻は冊子を取り出して見せた。
表紙はイケメンの若い男が平安時代の貴族を思わせる衣装姿で、星空に向かって両手をあげている写真だった。
・・・惑星の預言者、ムルメン。遠い天体から来ました。今は人間の体を借りています。あなたの悩みを聞いて、囚われの身となっているタマシイを
宇宙に解き放ちます。さあ、来たれ、悩めるタマシイ。祈れよ、満天の星空に向かって。・・・・
俺はめまいがした。妻の顔は笑顔だったが、その瞳の奥に、深い心の闇がいつの間にかできているのが見てとれた。
「部長の家でのことが原因なのか?あれは仕方がないことだぞ。」
「・・・あの時、部長さんのタマシイが私の体を通り抜けていったのが分かったの。そして身籠ったワ。それは預言されていたんですって、ムルメン
様がおっしゃっていたの。」
だめだ、今、否定しても妻は反発するだけだ。まず、しっかり妻の苦しみを受け止めること。共感。そうだ共感することだ。
「苦しんだんだね。でも・・・ステキな・・教祖さまじゃないか・・・・」
俺は心にもないことを言っていた。
「そうでしょ。あなたもそう思うでしょ。今度あなたも一緒にムルメン様の教会に行く?」
「ああ・・そうするよ・・・・」
俺の心は沈んでいた。
次の土曜日、俺と妻は車で妻が入信したという教会に向かった。それは郊外の林の中にある円柱形の建物だった。入口には天空ムルメン教会と
書かれた銀色のプレートが掲げられていた。入口では巫女の格好をした20くらいの女性が受付をしていた。
「電話でお話しした夫です。」
「ようこそ教会へ参られました。どうぞこちらへ。」
受付の奥は応接室だった。壁一面には天空図が描かれていた。そこで受付をしていた女性に入信申込書一式を渡された。教会の説明と規約、費用の説明
の書かれた書類、誓約書などだった。しばらくして、やはり巫女姿の40歳代の女性が入ってきて、渡された文章を説明し始めた。
「先月入会されました奥様にはお分かりのことと思いますが、このような料金がかかります。まず、入会費50万、教会利用費年60万、月報費2万、
それと春夏秋冬の惑星のお祭り費用各5万、皆既日食があるときにも5万が必要になります。ご夫婦やお子様がすでに入信されている場合は、
入会費は無料となります。」
「それは夫の入会費は無料ということですね。」と妻。
「はい、その通りです。」
よかったね、という表情で俺を向いてニッコリ微笑む妻。俺はもう、何が何だか分からなくなっていた。妻はどこからその費用を出したんだ。
それに誓約書が不思議な内容だった。教会内で見聞きしたことや体験したことは、決して信者以外に話さぬ事。もしその規約を破れば100万円の違約金と、
教会内審判を受ける、と書かれていた。俺は妻のためを思い、何か月ぶんかの俺の給料に相当する費用を支払って入信したのだった。
その日の夜10時から、祈りのセレモニーがあるとの話で、一度家に帰り親子3人で夕食を食べた後、俺たち夫婦はもう一度教会に出かけたのだった。
40台ほど置ける駐車場は車でいっぱいだった。奥に入ると教会は円形のホールだった。そこには50人ほどの人々が椅子に座って教祖様が来るのを
待っていた。人々の顔ぶれは70代から高校生まで色々だった。女性の方が多いようだった。やがて教祖が壇上にあらわれた。正直、光源氏のコスプレ
みたいな教祖は30代半ばに見えた。だがあまり見ない超イケメンだった。この後ありがたいお説教があったのだが、読者がその内容に興味があるとは
思えないし、また入会規約にも違反するのでここには書かない。だが、その後に起こったことは書いておこう。それはあまりに衝撃的な出来事だった。
午前0時前、教祖の話が終わり、信者が椅子を後ろに片付けると、星のセレモニーを始めます、というアナウンスが流れた。天井の照明が消されると、
機械的な音とともに天井がスライドして星空が現れた。壁の間接照明がわずかに場内を照らしていた。暗闇に目が慣れてくると、皆が壁際で服を
脱いでいた。妻に手を取られ俺も他の信者と同じように服を脱いだ。信者全員が全裸になったのだ。若い巫女姿の女子が会場の中央に来た。
「皆皆さま、星の国へ参られませ。輪になって、祈りましょうぞ。とわの祈り。」
皆が打ち合わせたように全裸で二重の輪になった。男が外側で、女は内側の輪になって互いに向き合って立っていた。手で前を隠す者など誰もいない。
壇上で巫女が竹笛を奏で始めた。別の巫女が号令をかけた。
「男は右に、女も右に三歩進みなさいませ。」
向かい合って立っているから、そぞれ反対方向に人の輪は回った。最初50歳くらいの女性が俺の向かいにいたが、今は40代の女性だ。
「男は左に五歩、女も左に五歩進みなさいませ。」
今度は16、7の高校生くらいの少女だ。ちょっと膨らんだ胸にピンクの乳首と乳輪だった。
「抱擁の儀!」
巫女が叫ぶと向かいあった者同士が抱き合うのだ。ためらう俺に少女が進んで抱擁してきた。俺の鼻を少女の髪がくすぐった。いい匂いだ。
少女の乳首が胸にあたっている。それだけではない。少女の恥丘に俺のチンポがギュとあたっている。やばい。立ってきた。妻がいる場所を探すと、
70くらいの痩せた爺さんと抱擁している。2分間の抱擁が終わると、また輪が回り始めた。そしてまた抱擁。今度は40くらいの豊満な女性。二人の女性が
壁に立って見ていた。人数が合わなかったらしい。こうして7回の抱擁の儀のあと、その夜の集会は終わった。何だか妙に開放されたような、
すっきりした気分だった。毎週ある教会の集まりが俺は楽しみになっていた。
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