(後日談)
あの一件から10年が経過した。山崎は2年の実刑を1年7か月で務めて、実家に戻って家業のぶどう作りを手伝っていると噂に聞いた。
俺たち夫婦の子も小学校3年になる。一人娘の美紀は妻に似た美人で、同級生の三人からすでに婚約のプロポーズを受けているらしい。
妻に似て運動神経が良く、一輪車を乗りこなしている。俺は怖くて見ていられないのだが。お風呂もお父さん(俺)と一緒にはいっている。
将来は俺みたいな人と結婚するらしい。妻が20歳ごろAV女優をしていた件は、今も俺は知らぬふりをしている。
先日俺たち夫婦は部長の家に招かれ夕食を共にした。俺が課長に昇進した日の夜だった。部長は50過ぎの貫禄のある人で、奥さんもいるが
3人目の妻らしい。もと一流店のホステスだとか。部長の奥さんの手料理で酒を飲んだあと、部長が妻を向いて
「〇〇君(俺)には非常に期待しているんですよ。だからこそワシが推薦しましてね。いやあ課長昇進はワシにとっても朗報です。
ところで今度、そのお祝いといっちゃあ何だが、ワシら夫婦と4人で温泉にでも行きませんか。〇沢にいい宿があるんですよ。
奥さんも一緒に。そうだ、女のお子さんがいたっけな。実家にでも預けて。」
俺は、いやあ、ちょっとと断ろうとしたが、妻が遮るように
「いいですわね。ぜひご一緒します。娘は伯母のうちに預けますわ。」
俺が、ええーという顔をしているのをよそに
「いやあ、そりゃ良かった。実はもう旅館を予約しているんですよ。今度の連休、あいてますか。」
「はい、だいじょうぶですわ。」
部長は大喜びではしゃいでいた。
その後俺がトイレに行くと後ろから部長がついてきて俺の耳元で囁いた。
「君の奥さんは昔と変わらず美しいねえ。にしうら結衣、ワシも大ファンだったよ。今もDVDは50本ほど持ってるよ。あまり言うと家内が焼きもち
やくけどね。君が羨ましいよ。これからもよろしくね。」
そう言って汗ばんだ手で俺の手を握り握手をするのだった。
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