山崎の奴、裁判で無期懲役にでもなればいいとも思ったが、そんなはずはなかった。下手をすれば執行猶予とかの可能性もある。
妻のところへまた来ないとも限らない。それより妻のお腹の子が心配だった。俺の子種じゃなかったりして。ペンギンは自分の子じゃなくても
世話をして育てることがあるらしい。背筋を伸ばしてタキシード姿のペンギンたち。子供のころから俺はペンギンが好きだった。
だいじょうぶか俺、少し気が変になってないか。生まれた子が男の子で山崎そっくりだったらどうしよう。近所の奥さんが妻と立ち話で、うちの子、
隣の家のご主人にそっくりなの、と笑いながら言っていたそうだ。その時は笑って聞いたが、今は冗談に聞こえない。かわいい女の子だったら許せる?
最低だな俺。ちょっとまてよ、それいいかも。やっぱ変か。第一子にDNA鑑定が必要なんて、これが何かのむくいだとしたら、俺のご先祖様には
そうとうなスケベがいたのかも。
あれやこれや考えながら月日が経った。妻のお腹もだいぶ大きくなってきた。妻のお腹が大きくなるにつれ、俺の心も固まってきた。たとえ
山崎の子種だろうと、生まれてくる子は俺の子だ。決して妻も子も山崎には渡さない。俺の子種の可能性だって十分にある。だけどDNA鑑定はしない。
そう決心した。妻は幸せそうだ。何か自信に満ちた表情になっている。俺ともちゃんとセックスしている。裸の妊婦。妊婦好きのAVファンだったら
泣いて喜ぶ姿だろう。そのうち母乳も飛び出すだろう。幸せはこれからだ。
(おわり) 読んで頂きありがとうございます。
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