翌朝俺は妻に見送られて出勤すると、本社のセキュリティー担当の知人に俺のUSBメモリーを盗んだのは山崎かもしれない、と話しておいた。
俺の疑いは的中して、数日後に山崎が犯人であることが判明した。山崎の使っている会社のパソコンに、俺の持っていたデータの痕跡が残っていたのだ。
山崎は査問委員会にかけられることになったが、その前日に退社届けを出して行方をくらませた。噂では会社が山崎を刑事告発するらしい。
俺は休日に帰宅した折に妻に山崎の事を話した。無論、妻の山崎との不倫関係に俺は気づかぬふりをしていた。妻は驚きを隠しきれない様子だった。
真犯人が見つかり、人事異動の時期を待たずに俺は本社に戻れることになった。
本社に戻って4か月が過ぎた。山崎は先月逮捕され取り調べを受けていた。いずれ裁判にかけられるだろう。会社への損害が大きいので実刑は免れないだろう
という噂だった。ある日妻が台所で嘔吐していたのでどうしたのかと聞くと、どうやら妊娠したらしい。妊娠3か月だというのだ。昼に病院に行って診断
されたらしい。順調にいけば妻が30になる前に第一子誕生だ。妻は以前から30歳までに子供が欲しいと言っていたので、願いが叶うことになる。
まだ安心はできないが幸福に一歩近づいたとは言えるだろう。俺は自然と笑いがこみあげてくるのだった。
俺は今も妻がAVに出ていたことは知らないふりをしていた。だがパソコンの秘密のファイルには、ネットでかき集めた妻の出演動画を保存し、
密かに見ては妻とのセックスに役立てていた。俺の脳内では俺は一流のAV男優なのだ。AVシーンをセックス中に想像するだけで10年前の妻の
撮影現場にタイムトリップできる気がした。一種のバーチャル・リアリティ?だった。AVに妻が昔出ていたことは俺の心の中で消化できたと思った。
山崎のことも、悪い男と気が付かずに家に連れてきて泊めたりした俺がバカだったのだ。そう言い聞かせて一度は凹んだ俺の気持ちも元気になっていた。
これで元気な子供ができれば万々歳だった。俺はふと寝室に盗聴器を設置したままなのを思い出した。一つは電波で飛ばすタイプ。もう一つは
毎週金曜の午後に人の声に反応して録音する装置だった。妻のパートが月曜から木曜だったので、浮気するなら金曜だと考えたのが設定理由だった。
もう電池も切れているだろうと思って、調べるとまだ動いている様子だった。俺は早速パソコンにつないで音声ファイルをチェックした。殆どが
俺が単身赴任中の、山崎との不倫行為の音声だった。そのうちにゆっくり暇つぶしに聞こうと思ったが、一つだけ3か月前の音声があった。
嫌な予感のした俺は、何だろうと思って再生を始めた。
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