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初めは上目遣いに私の表情をときおり確認しながら話をすすめていたR田も、話しながら彼自身も興奮が高まったようで、次第に熱を帯びた口調になっていく。いち度目はお互いの自宅の中間点に位置する幕張でランチをしたという。フラワーアレンジメントの話題で盛り上がったらしい。妻は数年前から銀座のフラワーアレンジメントの教室に通っている。一方で、R田は英国在住の彼の叔母がフラワーアレンジメントの指導をしており、日本でも教室をもっている。R田の引き出しの多さには関心するが、やはり裕福な家庭で育つということはそういうものなのだろう。全くの別物らしいが、私などは生け花との違いすらわからない。そして、2度目はR田の自宅近くの店で食事をしたという。R田の自宅には、付きあいで購入したフラワーアレンジメントの写真集が何冊もあるもあるので、気に入ったものがあったら持ち帰って欲しいという理由でランチに誘い、食事を終えたあとに自宅マンションに連れ込んだという。
「でもキスを拒絶されたんだろう?ここから発展するのか?」
「キスは拒絶されてませんよ。あのソファーにふたりですわり、写真集に目を通す彼女の肩を抱き寄せました。全く抵抗はしませんでした。彼女が目を落としている写真集のページをのぞき込みふたりの頭が接近したところで、彼女の方からこちらに顔を向けてきました。当然、流れで口づけをしました。本当はもっとジワジワと攻めていくつもりでいたんですが、彼女の熱っぽい舌使いに、こちらも完全にスイッチがはいってしまい、その結果しくじったんです。我慢できず、スカートの中に手を入れようとしたところでイヤイヤが始まったんです。急に我に返ってしまったんでしょうかね。今回の反省点です。」
「その後はどうなったんだ?」
「もちろん少し気まずくはなったんですが、何故か彼女が謝りだして・・・、お互い謝りだして。彼女は帰ると言い出したんですが、写真集を一冊借りて行ってもいいかと聞いてきました。どれでも差し上げるので遠慮なくといったんですが、たって借りると。でも、また来てくれるつもりなんだと確信しました。それ以来、こちらからは連絡していません。彼女からの連絡をひたすら待っているところです。」
泰然を装って、「それっきり連絡がこないなんてオチは?」と聴いてはみたものの、下半身の一部は怒張の極みに達し、スラックスにシミを作っていないか心配になる程だった。
「近々、必ず奥様から連絡を取ってきます。」
R田は片口に不適な笑みを浮かべながら断言した。
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