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R田からわたされた動画は行為の途中で終わっていた。恐らく充電切れとなってしまったのであろう。R田と美〇子のピロートークも聴きたかったが、それは贅沢だと思った。家庭におさまり、不自由のない生活をおくっているようにみえる女性であっても、秘めた欲望を開放される機会を待っているのかもしれない。美〇子のような女性がこれほども簡単に誘惑に堕ちたことは驚きであったが、美〇子に限ったことではなく、一般的なことなのかもしれない。私の妻にも興味があるといったR田の言葉が本格的に気になり始めたのはこの頃からである。
翌日、職場での美〇子は平素と変わった様子は全くなく、雑務をテキパキとこなし、相変わらず下品なことばかり口にする教授のこともうまくあしらっていた。その日はR田とも院内で会うことができ、改めて礼を述べた。
「本当にありがとう。いやぁすごかった。お前はすごいやつだよ、まったく。」
「はは。お褒めの言葉ととっておきます。よろこんでもらえて良かったです。映像は途中で途切れてしまいましたが、あの日は3発。しっかり頂きました。少しずつ仕上げますよ。」
「なんかお前のことが怖くなってきたよ。」
「なにいってんすか。先生に頼まれたからですよ、もともとは。それから今週の土日は女子ダブルスの大会があるらしいんで、行ってみます。テニスしてるところを見てみたくないですか?また報告しますよ。」
「そうだな。ありがとう。なんかすまないな。」
「いいえ、今となっては俺が楽しんでいますから。それに彼女はすごくいい女です。」
R田と別れたあと、テニスの大会会場を聞いておけば良かったと後悔したが、R田からの報告を待つのもまた一興と考え直し、出席しなければならない院内会議の会場へと向かった。会議が始まるとすぐに私の院内PHSが鳴った。PHSにでると、「◇〇製薬のR田様より先生に外線がはいっております。ただいまお回し致します。」と電話受付の女性の声が聴こえた。R田は私の後悔を読んでいたかのように、そしてつまらない会議からの脱出を手引きするかのようなタイミングで私の院内PHSを鳴らしてくれた。わざわざ病院代表に電話をかけ、交換から私に回してもらったのだろう。
「お忙しいところすいません。」
「よく言うよ。気を遣ってくれたんだろう。不毛な会議から助け出してくれてありがとう。お陰で病棟に呼ばれたフリして見事に脱出できたよ。」
R田は先ほど言い忘れてしまったと、例のテニスの大会が開催される運動公園を教えてくれ、さらに<本日のアレ>を私の携帯に送っておいたと意味深な言葉をのこして電話を切った。
医局に戻るとマグカップを片手に新聞を読んでいる美〇子の他には誰もいなかった。早速、自分の携帯を確認すると添付ファイル付きのR田からのメールがあった。ファイルを開くと、ベージュのスカートを捲り上げて、若草色のパンティーを前方から撮影した写真が展開された。写真は上は臍のあたりで切れており、下は膝の上までのものであったが、よく見ると背景には見慣れた我々のデスクが写っていた。写真はこの医局で撮られたものであり、捲り上げられたベージュのスカートは目の前で新聞を読む美〇子が今まさにはいているものであった。改めてメールの本文をみると、午前中に今日の下着を医局で撮影し、送るようにお願いしたら、早速送ってきたという旨のR田のメッセージがはいっていた。
すました顔で新聞を読む美〇子の横顔を盗み見た。あの彼女がここで、まさに我々のこのデスクの前で、男の要求に応えるために自分の下着をさらし、健気にもそれを自ら撮影したのだ。その事実に今にも爆発しそうな興奮を覚えた。
その日から週末までは、土日に開催されるテニス大会で今度はR田が何を仕掛けてくるのかということに大きな期待を抱いて過ごした。R田の手練手管に翻弄されていたのは女たちだけではなく、私もだった。
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