タクシーのか後部ドアが開いて待機している。
「すみません、お待たせしました」
タクシーに乗り込み、行き先を運転手に伝える。
「高台の坂井さんのお宅までお願いします」
「は、はい!かしこまりました」
タクシーが出発しない。
「お連れ様は?」
「えっ?私ひとりですので…」
「ひとり…?」
不思議そうに恵をルームミラーで見ている。
タクシーが出発した…
「小料理屋中井の女将さんですか?」
「えぇ、坂井さん宅にお弁当を届けに…」
「あの貸しビルも坂井さんの物件ですね、繁盛しているんでしょう?」
「えぇ、まぁ…」
「いつ、開店したんですか?最近でしょう?」
「えぇ、開店してまだ半年ですから…」
ルームミラーで恵をジロジロと見ている。
運転手は坂井の女の悪い噂が絶えない事、手を付けた女が風俗に売られたりしている噂を思い出した。
運転手は、心の中で思った。
「半年じゃ、坂井の噂なんて耳に入らないよな、哀れな女将だよ、若いから坂井も本気じゃないかな。いい女だ、こんな美しい人妻、そして、何よりおとなしい感じ、清純な感じがたまらないなぁ…」
タクシーは、坂道を登り、高級住宅街へ
「すごいですね、大きなお屋敷ばかり」
「えぇ、ここはお金持ちばかりので街ですよ、中でも坂井さんは特に…」
「はい、着きましたよ」
坂井さんの自宅前、鉄の門扉の前の大きな車寄せに止まる。
「ありがとうございます、いくらでしょうか?」
「3200円です」
「はい、奥さん、ありがとうございました!頑張って!」
「えっ?」
タクシーが出て行った。
タクシーから降りて門扉の前で立ち、インターフォンを探している。
あちらこちらにセキュリティのカメラが散在して設置されている。
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