土曜日が来た。
恵はシックな紺のワンピース姿、着替えが入ったスーツケースを準備して、真希の迎えを一階の店内で待っている。
「孝さん、真希さんが来たら、挨拶をよろしくね。本当にお世話になっているし、高価な貰い物ばかりしているし」
恵は、真希にもらった腕時計やネックレスを付け、ブランドのバッグも手に持っている。
「ああ、わかってるよ。信じられないよな。お金持ちの感覚って」
店の前に車が止まる音がしてふたりは表に出た。
「こんにちは!」
大きなベンツから真希が下りて、笑顔で挨拶をする。
「こんにちは」
恵は明るく挨拶をする。
「こ、こんにちは!」
孝は、初めて真希に会い、あまりの若さに驚いた。
「いつも坂井さんにお世話になっています。また、奥様!妻にも良くして頂き、ありがとうございます!少し、中に入られませんか?」
「じゃあ、少しだけ…」
「はい…恵!お茶、お茶…」
孝は、真希の若さと、美しさにオロオロしている。
「どうぞ…粗茶でございます」
恵がお茶を出す。
「ありがとう、恵さん。大将、どうしたの?なんだかソワソワしてる?」
真希が不思議そうに尋ねる。
「えっ、えぇ、坂井さんが50歳と伺っておりましたので、勝手に奥様を想像しておりました。こんなに若くて綺麗な方だと驚いております」
「ふふふ…いろいろあってね、私は再婚よ、33歳です。再婚っていっても、内縁の妻ですけど…恵さんの3つ上なのよ。歳も近いからすぐにお友達にもなれたわっ。妹みたいに思っちゃう」
「そうでしたか…あ、ありがとうございます!奥様!恵も友達がこの地域にいないのでよかったですれ」
「今日は、有馬温泉を予約しました。楽しい温泉旅行になればいいね、恵さん!あらっ、恵さん、私が差し上げた腕時計もネックレスもしてもらってるのね、お似合いよ、ありがとう!」
「はい、楽しみにしていました。」
「さあ、行きましょうか?恵さん」
「はい」
「奥様、恵をよろしくお願いします!」
孝が恵のスーツケースを引き、ベンツのトランクに詰め込んだ。
「孝さん、3日後にまた、恵さんをお届けに参りますね」
「はい、よろしくお願いします」
ベンツが出発した。
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