新之丞は少しづつだが落ち着きを取り戻しつつあった。
これで家禄の安堵を得られれば...
加世の願いは1つであった。
あの出来事から数日後。
使用人: あいすいません!三村様の奥様で?
加世: え?はい!なにか?
使用人: コレを!島田様からです!では。
加世: ...
島田から文が届いた。
島田: 今日の夕方、大橋の柳の下で待つ。来られなければ先日のことが三村に伝わるであろう。
なんと言う卑劣な...
しかし加世にはどうすることも出来なかった。
夕方
島田: よく来た!では参ろう。
こんな場所を2人で歩いて...
誰かに見られたら...
加世は気が気でなかった。
島田: ここの茶屋に部屋を取ってある!
加世: ...
この時、新之丞の叔母の夫である波多野東吾がたまたま見ていた。
これは島田の狙いでもあった。
もし誰かに見られ新之丞の耳に入れば離縁になり加世を妾にしようと考えていた。
茶屋の女将: これは島田様!お部屋のご準備整っております。ごゆっくり。
島田: そうか!では参ろう。
襖を開け部屋に入ると酒が用意されていた。
島田: 加世は酒を呑むのか?
加世: ...いいえ...そんなことより...島田様...
島田: なんだ?
加世: 先日のお願いした件...いかがでございましょう?
島田: おぉおぉ!その件であったな!それなら御家老にしかと伝えたぞ!御家老も納得の様子であった!
加世: 左様にございますか?
島田: あぁ!案ずることはない!家禄の安堵は間違いなかろう!
加世: ありがとうございます!
島田: なぁに!私の可愛い加世の為であろう!当たり前ではないか!
加世: ...
島田: そんなに離れていてはいかん!こっちへ寄れ!
加世: 島田様!...この度のお取り成し誠にありがとうございます。せ...先日のことは忘れることにいたします...どうか...どうか島田様もお忘れください。
島田: 忘れる?なぜ?
加世: な...なぜって...
島田: 加世よいか?私に頼み事をしてきたのはそちらの方だ!私にただ働きせよと?
加世: いいえ...そのようなことは...ただ前回の1度で...ご勘弁頂けないかと...
島田: 加世!私を誰だと思っておる?番頭役の島田藤弥だぞ?
加世: わかっております!このご恩は決して忘れません!
島田: 家禄の安堵とは三村の一生を保証するものだ!で、あれば...一生尽くさねばならぬのではないか?加世!?
加世: そ...それは...
島田が立ち上がり襖を開けた!
そこには大きな2人用の布団が敷かれ枕元に酒があった。
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