第6話 計略①
午後1時。
木崎は家電量販店の駐車場に居ました。
『お疲れ様です。待ち合わせ場所に到着しました。奥さんはまだみたいなので待っています。』
じんにそうメールを送ると
『了解しました!何かコッチが緊張してますよ(笑)』
というじんからの返信が。
【これから何が起こるか知りもせず、呑気に「(笑)」なんて付けてきてw】
木崎はじんの返信を見てほくそ笑んでいました。
しばらく待っていると、駐車場にまいらしき車が入って来ました。
自分の車の前を素通りする際に中を確認すると、運転していたのはまいに間違いありません。
しかしまいは気付かずに離れて行きます。
『入り口と反対側の壁際に居ますよ。黒いホンダの車ですから。』
木崎はまいにメールを送りました。
まいはひとまず車を空いたスペースに駐車。
そして辺りをキョロキョロと見回しています。
携帯を確認したのか、まいがクルマから降りてきて木崎の元へと歩き始めました。
木崎もまいを迎える為に車を降ります。
それに気付いたまいが安堵の表情を浮かべました。
最低限のルールとして、まいとはメールアドレスしか交換していません。
電話番号でも聞いておけばもっとスムーズに落ち合えたのでしょうが、じんに対する礼儀を重んじ、それはしていませんでした。
「こんにちは、まいさん。さ、助手席にどうぞ」
まいを車に乗せてすぐに出発します。
ここからは時間との勝負。
久し振りに会ったまいは、緊張しながらもはにかんだ笑顔で木崎の車に乗り込みました。
【今のところ奥さんに拒否反応は無いな】
第一関門はクリア。
木崎は安堵しました。
公園へ向かう車の中で、木崎とまいは普段のメールと同じ会話をしました。
毎日の子育て、家事について、行ってみたいカフェのこと。
2人だけで会ってるというのに、まいは普通に楽しそうに会話をしています。
むしろ普段よりも積極的に会話をするまい。
しかしそれは木崎に会う事が嬉しかった訳ではありません。
頑張って話す事で、自分の中にまだ存在する罪悪感を打ち消すため、そして自分から話題を振る事で沈黙を避け、変な方向に話が行くのを防ぐためでした。
しかしその頑張りも長くは続きませんでした。
「もう寒くなってきたから乾燥が酷くて…………洗い物するだけで手がカサカサになっちゃうんですよね(>_<)」
このまいの一言がきっかけとなり、事態は急転しました。
「そうだよねぇ。どれどれ…………」
木崎は徐にまいの手を握りました。
一瞬ビクッと硬直するまい。
しかし木崎はまいの手荒れを確認するだけに留め、また手を離しました。
「確かにカサついてるよね。ちゃんとハンドクリームとか塗ってるの?」
まいはドキドキしながら木崎の質問に答えました。
「ちゃんと塗ってるし、寝る時は手袋履くようにしてるんですけどねぇ……」
「そうなんだ。でもハンドクリーム塗ってこれなんだったら、もっと粘度の高い物、例えばワセリンとか塗ってみたら?」
「ワセリンですか?普通に売ってるのかなぁ……」
「売ってる売ってる(笑)それ旦那さんに買って貰って塗ったら良いよ♪あ、塗るのはね、こうやって刷り込むよりも…………」
木崎はまたまいの手を握り、今度は薬を塗り込むように優しく手を撫でました。
するとまいの身体が抵抗からなのか、ビクッと反応しました。
木崎はそれでも手を撫でて行きますが、まいから拒絶の言葉や行動はありません。
【おや?これなら少々強引でも大丈夫かな?】
木崎はこの後の作戦を頭の中で組み立て直しながら、股間が熱くなるのを感じていました。
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