第16話 記憶
じんが木崎からのメールを確認したのは午後2時30分。
予定よりも早い連絡に疑問を抱きました。
【予定よりも30分も早く??何かあったのかな?それとも妻の事だから会話が続かず、気まずくなって解散したんだろうか?】
しばらく考えていると、まいからのLINEも入りました。
そのまいのLINEが至って普通だったため、じんは【ああ、別に何も無さそうだな】と安堵。
もうすぐ目的地。
2人へ簡単に返信し、後からの報告を待ちました。
2階へと繋がる階段を上がり、いよいよ入室です。
ドアを開けるとそこには黒を基調とした落ち着いた部屋が目に入りました。
「ここ?間違いない??」
「たぶん…………」
入ってすぐ目に入るのが丸いテーブル、
その右にキングサイズのベッド。
さらに右奥に進むとトイレとバスルームが。
間違いありません。
ここはあの部屋…………
未だにまいの心に暗い影を残しているあの記憶の部屋でした。
入口から一歩入っただけで、その場で固まっているまい。
木崎はその様子を見て、まいの元へ歩み寄りました。
「大丈夫? 恐い??」
そう言って優しく抱き寄せると、まいは小さく頷きました。
「何が恐いの? あの事を思い出しちゃうから? それともこれからの事?」
まいは少し考え、小さな声で話し始めました。
「…………前の……コト…………やっぱり……後悔してるんだ…………」
「大丈夫だよ。あれは旦那さんの為の行動だったんでしょ? まいさんは悪くない。女性はね、意に介さず身体が反応する事があるんだ。それは【自らの身体を傷付けないように守るため】なんだよ。まいさんは【逝かされたくない】って思ってた。そして逝かされずに乗り切れた。つまりね、まいさんの身体は自分を守る為に反応したけど、心までは反応してなかったんだよ。まいさんは汚れてなんかない。本当に汚れるっていうのは、心まで受け入れてしまった時だよ。」
木崎はそう言いながらまいの頭を撫でました。
まいも木崎の言葉と直接触れて感じる体温で、少し落ち着きを取り戻してきました。
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