第14話 決意と嘘④
木崎の言う通り、まいはドキドキして木崎と会いました。
しかしそれは本当に不安からだったのか?
木崎さんとは2度も肌を合わせた関係。
その感触、身体を襲った感覚は忘れようとしても忘れられない物だった。
となると…………ひよっとして自分は木崎さんに会う事を悦んでいた?
【何か起きる】ことを期待していた?
いや、そんなハズはない。
私が愛してるのはじんくんだけ。
他の男になんか興味ないもん…………
でも…………私は木崎さんだけじゃなく、Dさんも受け入れてしまった……
それにさっきだって………………
考えれば考えるほど、まいは木崎の術中に嵌まって行くのです。
そして嵌まれば嵌まるほど、木崎の手首を押さえている力が、段々と弱くなって行きました。
【もう少しだ…………】
木崎にはまいが何を考え込んでいるか分かっていました。
分かっていて、自分からは何も話し掛けず、最後の一押しをする機会を伺っていました。
何でここに居るの?
それは主人が悦ぶから…………
悦んでくれたら何をされても良かったの?
いいえ、それは違う……私はそんな女じゃない……
じゃあ何でこの人のキスを…………
それだって主人の為だもん…………
本当にそう?キスを続けてどうなって行った?
受け入れてた…………場所が外じゃなかったら…………
違う!私が愛してるのは……そういう事をしても良いと思ってるのはじんくんだけ!
でも……しちゃったよね?Dさんとだって……
それだって…………でも……拒否しようと思えばいくらでも出来たよね……
大声で泣き叫ぶ事だって出来たよね……
何故それをしなかったのかなぁ…………?
やっぱりじんくん以外の男の人にも興味があったのかなぁ…………
ここまで来ると、まいの手は木崎に添えているだけになっていました。
自由を取り戻した木崎の手が、まいの太腿を上下します。
その手が与える快感に、まいの身体も心も抗おうとはしませんでした。
最後の一押しの時が来ました。
「もうすぐ着くよ」
まいが外を見ると、待ち合わせ場所の家電量販店の看板が見えました。
【えっ?なんだ…………何だかんだ言って、今日はここまでなんだ……】
安心と同時に少しがっかりに近い思いを抱いたまい。
しかし木崎の車は家電量販店の前を素通りしてしまいました。
【えっ!?もうお別れするんじゃ…………】
木崎はスマホを手に取り、何やら打ち始めました。
そして画面をまいに見せた後、また操作をする為に向きを変えました。
『お疲れ様です。今奥さんと別れましたよ。すぐに仕事に戻らないといけませんから、また夜に報告しますね。』
まいが見た画面にはそう書かれていました。
木崎はじんにそうメールを送ったのです。
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