第11話 決意と嘘①
木崎のいきなりのキスを受け入れるまいではありません。
しかし必死に顔を背けようとしても、木崎に押さえられて逃れる事が出来ません。
木崎は唇を重ねたまま左手をまいの頭の後ろから反対側へ廻し、まいの左肩をギュッと抱き寄せます。
そして今度はまいの口中へ舌を侵入。
これにはまいも堅く唇を閉じて抵抗。
しかし…………木崎の右手が下へと降りてきて、まいの乳房を大きく揉み始めると、その快感からまいの抵抗が弱まって行きました。
程なく舌の侵入が成功。
乳房を揉み続けていると、まいの呼吸が荒くなっていきました。
【はぁ…………んっ…………はぁ…………】
激しく舌を絡ませたながらのキス。
そのまま数分間の唾液交換。
まいの乳房を揉んでいた木崎の右手が背後へと廻り、ブラのホックを外そうと試みます。
「いやっ!」
まいは両手で木崎を押し退けて何とか脱出。
しかし次の一言で、まいは自らの退路を断ってしまいました。
「はぁっ……はぁっ……こんな、こんな所では嫌です…………」
初めてではないにせよ自らディープキスを受け入れてしまった事、旦那以外なんてと言いながらも旦那以外とのセックスを想像してた事を木崎に言ってしまった事。
その場をしのぐ為に発した一言でしたが、木崎には次へと行動を移すのに充分すぎる一言でした。
「“こんな所”じゃイヤなんだ(笑) じゃあ場所変えよっか?w」
自分の過ちにハッと気付いたまい。
「ち、違う…………そういう意味じゃ…………」
こういう場面での言い間違いは致命的です。
もう後には戻れない雰囲気が車内に漂っていました。
「とりあえず移動しようか。いくら人目が無いとは言っても、さすがにこれ以上ここに居るのはお互いに危険だしね。」
木崎はそう言うと、エンジンを始動し車を走らせました。
「さて……何処に行こうかね??」
まいは黙っていました。
『何処に』とは当然ホテルだと認識していたからです。
しかしまいはふと思い出しました。
木崎は仕事の都合でホテルに行く時間なんて無いはず。
「何処にって…………木崎さん、もう時間無いんでしょ?」
時刻は午後2時。
待ち合わせ場所までの時間を考えると、もう30分程度しか時間が残っていませんでした。
しかし前に書いた通り、木崎にはまだ時間がたっぷり残されていました。
「ああ、仕事ね。今日はもう会社に戻らなくて良くなったから(笑)」
『こんな所じゃ』『時間無いでしょ?』
何か言葉を発する度に、どんどんと沼に嵌まって行きます。
【これ以上の抵抗は無駄なのかも……】
まいの心は折れかかっていました。
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