第8話 本音と建前①
「じゃあ失礼して……w」
木崎はまいの右手を自身の両手で包み込むように握りました。
そして掌を上に向けて右手で全体をマッサージして行きます。
「こうやるだけでも冷え症が改善されたり、むくみが取れたりするんだよ」
これは木崎の方便ではありませんでした。
性感マッサージとして活動するにあたり、木崎は整体師の元で普通のマッサージについても学んでいたのです。
おかげでただの性感マッサージとは違い、事前のストレッチ等で好評を得る事ができ、それがリピートに繋がっていたのでした。
「さてと…………まずはこの前の事について奥さんの気持ちを聞かせてくれるかな?」
「この前の事って?」
まいはとぼけた訳ではありません。
唐突に聞かれた為、思わず聞き返してしまったのです。
「Dとかいう男の話だよ。いくら私と予定が合わなかったからって、何も他の男を呼ぶ必要も無かろうに……」
木崎は素直に自分の感情をまいにぶつけました。
そしてまいは初めてのプレイについて、木崎に語り始めました。
私がOKをしたのは、相手が木崎さんだと思ったから。
別に「木崎さんが良い」というのではないけど、次々に違う相手とってのはイヤだったし。
でも、木崎さんの都合が合わなくなったからって、あの人は違う人を呼んでしまった。
初めは本当にイヤでしかなかった。
でも、あの人が喜んでくれるから。
それに「エッチまではしない」って話だったし。
それで普通に愛撫が始まって…………それがすごく上手で……
いつも間にか普通に感じてしまってた。
いや、普通以上だったかも?
うん…………今までで一番感じる愛撫だったって思う。
それくらい凄かったの…………
あの人から「女を逝かせる達人だ」って事は聞いてたけど……
それでも他の人で感じてしまった自分がイヤになったの……
愛撫されてるうちに、一気に頭が真っ白になって行くのが分かった。
『ああ、このままだと逝かされちゃうんだ』と思ったら、どうしてもそれだけは避けたいって…………
やっぱり『主人以外の人に逝かされるのはイヤだ』って強く思って我慢した。
何回かそうなったけど、結局逝かされる事はなかった。
ず~っと長い時間愛撫されてたから、相手も疲れたのかな?
やっと解放されたと思ったら、主人が加わってきて…………
それで続きが始まっちゃった。
私は『もう終わった』って思ってたのに……
そのまま主人に入れられて、訳も分からないままその人とも…………
終わった後、主人がすごく喜んでくれたから、嬉しくは思ったけど…………
『一生主人だけのもので居たい』
ずっとそう思ってたのに……
主人だけで幸せだったし誇りに思ってたのに……
『汚れてしまった』
そう考えるようになっちゃった……
でも汚れたからといって、ずっとこんな事を繰り返すのはイヤなの。
私は今でも主人だけの女で居たいの……
※元投稿はこちら >>