射精を終えた若者でしたが、彼は和子の身体を離そうとはしませんでした。彼女を抱き締め、余韻の残る中での愛撫を続けていたのです。
気だるさの中でそれに応えていた彼女も、段々と目が覚め始めると、『もう、いい加減離れてよ。』という気持ちになります。
時間は夜の7時。彼らが押し掛けてきて、そろそろ4時間が経とうとしていました。
『ごめん…。ごめんなぁ~。』
ようやく和子の身体から離れた彼は、突然詫びの言葉を口にします。服を着始めた彼を見ながら、彼女も同じように着替えを行います。
廊下へと出れば、見送るように彼のあとを着いて行くのです。玄関で彼はまた、和子を抱き締めました。
それは未練たっぷりで、その気のない彼女の唇をひたすら奪っています。
彼の行動を受け、和子は警察に連絡はしないと告げました。世間体もありますが、彼から自分に対する愛情のようなものを感じてしまったからでした。
若者が去り、彼女は汚れた身体を洗い流すためにシャワーへと向かいます。悪夢のような出来事が去り、やっと平穏が訪れたのです。
『おばさぁーん!いるー?』
先程とは違い、家の中に人の気配を感じた僕は、また和子さんの家の中へと声を掛けていました。この日、二回目となります。
『はぁーい!』と奥から声がして、彼女が姿を現します。『どこか行ってたぁ~?』と明るく聞いた僕でしたが、彼女の顔を見て、言葉が止まりました。
額や頬は赤くなり、口のまわりも腫れたようになっていたからです。
『どうしたの~?』
本当はそう聞きたかった。しかし、聞けませんでした。残された跡が妙に生々しく、『もしかして、おばさん…。』と男の影を感じてしまったからです。
それが聞けないのが自分。38歳にもなって女性を知らない落ちこぼれた僕では、人並みなセリフなど吐けなかったのです。
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