君子、そして博子 16
待ちきれなかった。
時計が1時を回ると 俺は 朝の様に 家の中をウロウロと歩き廻っていた。
そして時計の針が20分を過ぎると 今度は外に出て 通りと家とを何度も往復した。
『お迎え?、君代ちゃんでしよ?』
『幸ちゃんはバイトなんでしょ?』
『イケないんだ 健ちゃん、フフ』
プレハブに向かうオバサンが俺に気付いて 俺の耳元で そう言って笑った。
『あとで教えて、ねッ』
そう 手を振ってプレハブに入って行った。
『山根』
また 家に戻りかけた時 そう呼ぶ声がした。
「お、おぉう」
バレバレなのに 俺は平然を装って答えた。
「何だ?、迎えに来てくれたのか?」
「そぅなんだろ?」
須藤が意地悪く聞いてくる。
「あん?」
「オバサンだよ、オバサン手伝ってたから…」
と、白々しく答えた。
自転車を止めて 前カゴから コンビニ袋を取り出してやってくる須藤を玄関で待った。
「何?」
「ん?、お菓子とコーラ」
「山根、これ飲んでたよな いつか、これなら飲めるんだろ?」
俺の問いに須藤が袋から取り出したのは[メッツ]だった。
「あぁ」
「歓迎何とかの時だっけ?、良く覚えてたな そんな事、俺だって忘れてたのに…」
「…うるさいよ!」
「それよりお前さ レディを何時まで玄関先に立たせとくんだ?」
「何だ?それ?」
「レディって 須藤がか?」
「……いいから!」
「そうだな…、ほら こっち…」と、俺は 玄関では無く 部屋の掃き出し窓を開けた。
「適当に座ってて、コップ 要るんだろ?」
「あぁ、ありがとう」
コップを手に部屋に戻ると 須藤はベッドに腰掛けていた。
俺は 須藤が買ってきてくれたメッツを らっぱ飲みした。
須藤は コーラをコップに注いでいる。
会話が途切れ 重たい空気に支配され ただただコーラとメッツだけが減っていった。
『ゲフッ』、重い空気を切り裂いたのは 俺のゲップだった。
「山根ぇ」
「お前なぁ…」
「悪りぃ悪りぃ」
「ゴメンな」
俺に そぅ突っ込んだ須藤が 頬を膨らませて 手で口元を押さえている。
その頬が 一瞬大きく膨らんだ。
「そぅいぅ須藤 お前だって…」
「うるさい!」
「そんなトコ見てなくて良いからッ」
「あのさ須藤?」
「なぁ山根?」
2人同時だった。
「何だよ? 山根」
「あのさ須藤?」
「綿貫 知ってんの?、お前が今日 俺んちに来てんの?、バイトなんだろ?綿貫 今日は」
「抜け駆け みたいの嫌だったから 一応は言った、お前と幸ちゃんの その…、[済んでる]のを知ってるってまでは はっきり言ってないけど…」
「良く黙ってたな綿貫?」
「まぁ俺には[女心]って まだ分かってないから…」
「でも アレだぞ…、襲われても知らねぇぞ」
「そんなに綺麗に化粧して…、短いスカート履いて、襲われたって知らねぇかんな、男の部屋に1人で来ちまったんだから…」
「そんな勇気有んのか?山根に」
「幸ちゃんは どぅすんだよ?、え?」
「んー?、綿貫の考えてる事は良く分かんねぇ。普通は嫌がるんだろぅな、自分と その… する事[してる]彼氏の部屋に 友達の女の子が1人で行く ってなったら」
〔 俺は そぅ答えながらも、根岸…[根岸真知子]の事を思い出していた。
『まぁちゃんと一緒なら怖くない』、そんな事を言って 俺に[許した]綿貫、それも 根岸の目の前で…。
もしかしたら 根岸と須藤が 綿貫の中で 入れ替わっているのかも知れない。
だとしても そんな綿貫の[思考]も 普通に考えれば[おかしな]事だった 〕
「勇気 ねぇ?」
「勇気は無いけどさ、[猿]だから、今の俺、だから 分かんねぇぞ」
「何だそれ?」
「あのさ 猿に[自分でする事]教えると ずぅっと やり続けちゃうんだってさ」
「まさに[猿]だから俺、朝から晩まで ずっと[それ]ばっかり…。知らねぇぞ須藤 襲われても…。綺麗に化粧した[メス猿]が目の前に居んだぞ 襲わねぇ方が失礼だろ?」
「馬鹿か? お前」
「だいち メス猿 って お前なぁ」
「失礼な奴!」
「… … … …」
「なぁ?山根?」
一瞬 無言の時間が有って『なぁ山根?』と聞いてきて、何を聞かれるのか待っても 須藤から次の言葉は なかなか出て来なかった。
「どぅした?、須藤?」
「なぁ山根?」
「その…、幸ちゃんとは ここ?、このベッドでその…、…なの?」
「まぁ…、そういう事になるよな?」
「イヤか?、同んなじベッドじゃ?」
「… … …」
「ゴメン。須藤ゴメン」
「もお、その…、[する]前提みたいに 俺」
「ゴメンな?」
須藤は黙って首を振った。そして つづけた
「…羨ましい」
「羨ましいって何が?」
「お前だって その、[卒業]してんだろ?」
「そういう事じゃなくてさ…」
「それ(卒業)は確かに そぅたけど そういう事じゃなくてさ…」
「山根が ずっと休んでる時も 毎日毎日 ノート取って… それを毎日届けて…」
「非道かったから私、とんでもない奴で…」
ー須藤が目を潤ませながら話しはじめたー
相手は 須藤が入学した時の三年生。
中学からヤンチャだった須藤 その須藤より更にヤンチャだった先輩彼氏。
良くバイクの後ろに乗せて貰ってた事。
[自然と そうなった]と須藤は思っていたが、先輩彼氏は違っていたこと。
「痛くてさ…、ずっと…」
「ただ痛いだけだった…」
「それでも あいつは ただ[出したい]だけで 私の事なんて ちっとも…」
「あいつが免許取って車買ってきてさ…。ある時 奴の そのまた先輩って人ん家に連れてかれて…、そん時 何て言ったと思う?あいつ」
俺は 何も答えられずにいた。
「その 更に先輩って人と その仲間の人達、先輩って人の彼女と 仲間のうちの誰かの彼女。酒臭くて タバコ臭くて…」
「で、部屋に入るなり奴がさ『先輩の彼女さん アノ日なんだってさ、何日もしてないだってよ…、お前 相手してやってくれよ、俺の顔たてると思ってさ、な?』だって」
「だから私 奴のアソコ 思いっきり蹴りくれて逃げてきた…」
「それが 山根 あんたと幸ちゃんが入学する前の春休み、それから何回か 奴が『より戻そう』って門の前で待ってて…、知ってんだろ?、山根も話しくらい聞いてんだろ?」
「ああ…」
「…で?」
「それからも 何回か来た…」
「でも、ひつこくするなら 親や警察に行くって…、で、別れた、あいつとは…」
「で?、2年の あの先輩達は?、知ってんの?その事」
「あいつ等は知らない、その…、何が有ったかまで 全部は、ただ 別れた って…」
「でも、幸ちゃんには話した、全部、何から何まで全部」
「羨ましいって、あんた等が羨ましいって…」
「何が普通か分かんないけど、もっ回 ちゃんと 女子 やりたい、って」
「…そう、…かぁ」
ベッドに座って 下を向いて話す須藤を 机の椅子に座って 腕を組んで ただ聞く事しか出来なかった。
「でもさ須藤…」
「だからって お前、良いのか?、俺ん家なんか来てて…、知ってんだろ?俺と綿貫の事」
「…分かんない」
「でも しょうがねぇだろ!」
「私 馬鹿だからさ 良いのか悪いのかなんて分かんないけど…」
「だから 幸ちゃんにも話して…」
「それで…、それで…」
「何か[落ち着く]んだよ お前等と居ると」
「なぁ、オバサンとこ行くか?」
そんな須藤に[覆い被さる]なんて、とても そんな気にはなれなかった。
で、咄嗟に そう 口をついて出た。
が、須藤は黙って首を振った。
そして 立ち上がって 俺に しがみ付いてきた。
唇を重ねてきたのは 須藤の方からだった。
須藤の服を1枚脱がせては 自分でも1枚脱いで…。
裸になった須藤とベッドに崩れた。
「…優しくして…」
「乱暴なのは嫌…、優しくして…」
目を瞑った須藤が そぅ言っていた。
「痛かったら…」
「痛かったら言って…」
「痛い事 しないから…」
そぅ言って[少し]須藤の中に挿った。
須藤の眉間にシワが寄った。
「…痛い?」
須藤は黙って首を振った。
更に 少し進んだ。
眉間のシワを深くして 須藤が俺にしがみ付いてきた。
「…痛い?」
「…やめる?」
目を瞑ったままの須藤が 唇を重ねてきた。
俺は また 少し 進んだ。
俺は 舌先で 須藤の唇を割った。
須藤の唇を割った舌先に 須藤も舌先で 応えてくる、須藤の舌に俺の舌先が絡め取られた。
また 少し 進んだ。
唇を離した須藤が 俺を抱き寄せ しがみ付いてきた。
俺は もぅ少し 進んだ。
が、俺の腰が 須藤の太ももに ぶつかった、これ以上は進めない。
俺は ゆっくりと 腰を前後させた。
しがみ付いていた須藤が また唇を重ねてきた、須藤自ら 俺の唇を割ってきた。
ゆっくりと ゆっくりと 前後をした。
そして少しずつ そのストロークを 大きくしてゆくと また 須藤の舌が 俺の舌を 絡め取った。
ストロークの幅を大きくするに連れて 俺の舌を絡め取った須藤の唇が 強く 押し付けられてくる。
俺の頭を両手で抱き寄せ 右に左に 顔を傾げては 絡め取ってゆく。
幅を増したストロークに 少しずつ スピードが加わる。
『の』の字や『円』を書きながら進み 逆の『の』の字を書きながら 戻った。
尻を浮かせ気味にして 須藤の中の『下の方』を抉る様に進んでは 尻を沈めて『上の方』を抉る様に戻った。
『アっ』『んッ』『クッ』『イヤっ』、そんな声が須藤から漏れはじめた。
自然と ストロークが早くなった。
俺から離れた須藤が 首を伸ばし アゴを突き出して 仰け反っている。
が、その両手は 所在無いげに 布団を掴んでみたり 俺の首に回してみたり 行き場を失ってしまっていた。
俺は その須藤の手を取り 指を絡めた。
須藤も 俺の指に 自らの指を絡めてくる。
手を握り合ったまま 腰を振った。
ストロークが速度を増した。
須藤から漏れる声が 途切れだした。
ベッドが ギシギシと揺れた。
『ウっ』そぅ言って須藤から離れたのと 声にならない声で 須藤が仰け反ったのとが 同時だった。
お腹~胸、白い液が 須藤に飛び散った。
須藤に飛び散った白い液体、俺は そんなのも構わずに 須藤の上に重なった。
須藤は 俺の頭に両手を回して 優しく 抱き寄せていた。
そして その腕が 更に強く 俺に巻き付いた。
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