君子、そして博子 12
オジサンが起きてきてしまっては これ以上は何も出来ない。
例えオジサンが仕事に行ったとしても 今度はすぐに母が帰ってきてしまう。
かと言って 此処にとどまって オバサンとオジサンとの 仲睦まじい所を 見る気にもなれない。
オバサンは適当な事を言って 俺を帰そうとまでしている。
俺はチャリを漕いでフラフラと出掛けた。
着いたのは とあるスーパー。
綿貫も普通の女子高生、洋服やら化粧品やら…、その為にバイトを始めた、それが このスーパーだった。
「あっ、健ちゃん」
品出しの為 振り返った綿貫が俺に気付いた。
「よっ、頑張ってんじゃん」
と、手を上げてみせた。
「何時まで?、4時までだっけ?」
「うん」
「じゃあ また来るよ その頃に…」
「うん、ゴメンね」
『4時かぁ、まだ2時間もある』
そぅ思いながらペットボトルを手に レジに並んだ。
ポケットから出した財布、カード入れの一番出前にはテレフォンカード、『須藤の電話番号 聞いとくんだった』そんな事を思いながら支払いを済ませた。
ペットボトルを片手にチャリを漕いで、例の本屋に向かった。
平日の昼間、中に居るのは 学生か主婦。
学生だろぅと主婦だろぅと、俺は女性の尻ばかりに目を奪われた。
『もの足りない…』、と言うより 仲睦まじいオバサン達が頭をよぎる、ついつい[その先]まで考えてしまう。
『これが嫉妬と言うものなのか?』、頭では理解していた、が 同時に 必死にそれを打ち消している、綿貫でも須藤でも博子さんでもいい 誰かと一緒なら忘れさせてくれる そんな気がしていた。
『誰かと…』、そんな思いが 女性ばかりを追いかけさせた。
かと言って あんまりジロジロ見る訳にもいかない、[成人式誌]のコーナーから拾いあげた本を持って[参考書]の前でパラパラと開いた。が、内容などちっとも入って来なかった。
むしろ グラビアのページが[お尻の物色]に輪をかけてしまった。
グラビアを見ては 俺の後ろを行きすぎる人を目で追って…、俺は何人の女性を頭の中で犯してしまった事だろう。
仕方なく 綿貫がバイトをするスーパーに戻った。通りの反対側で綿貫を待った。
4時を少し回った頃 スーパーの横から チャリを押した綿貫が現れた。
そして その後ろに 同じようにチャリを押した女子高生らしき女性、更にその後を歩いてくる女性 その女性は須藤だった。
『山根!』その須藤が最初に俺に気付いた。
真ん中の女子高生が綿貫と須藤の顔を見比べている。
『幸ちゃんの彼氏』、須藤が その子に そぅ教えていた。
綿貫は1人で、俺は須藤を後ろに乗せて、近くの公園を目指した。
綿貫を真ん中にベンチに座った、向こうの砂場では お母さん達に見守られて遊んでいた小さな子供達が 『帰るよぉ』と 声をかけられていた。
「そぅだ 明日ね オバサン家に行くの 君代さんと2人で…、健ちゃんも来る?」
「何しに行くんだよ 須藤と2人でなんて」
「ん?、お化粧」
「ちゃんと教えて貰おうと思って…」
それなりの[お年頃]の2人、それなりのオシャレもしたい、が それなりにお金もかかる。
で、須藤も綿貫と一緒にバイトを探していた、結果 同じ所に決めた、らしい。
「だからって お前ら 化粧品とか買ったの?、バイト代だって すぐには貰えないんだろ?、違うの?」
「うん、だからね 明日は オバサンの 君子さんので して貰うの」
「化粧品て[合う合わない]が有るらしくて…、荒れて かぶれちゃったり とか…」
「だから 合うのが分かってから買いなさいって、それまでは君子さんの貸してくれるって」
「ね?、君代さん?」
「へえぇぇ、そぅなんだ…?」
「て言うかさ 幸ちゃん?『健ちゃん』て呼ぶんだ山根の事、意外ィ」
「うん、学校以外ではね、君子さんも そぅ呼んでるし、て言うか 君代さんの前だから いいかなぁ って、今さら隠す事でもないし」
「何かさ『君子さん』と『君代さん』て 紛らわしくねぇの?、呼ぶ方も呼ばれる方もさ」
『それもそぅだね?』と2人が笑っていた。
そんな話をして、明日の約束をして、綿貫が須藤を乗せて[2ケツ]で2人は帰って行った。
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