朝7時、言っていた時間通りに香緒里さんが起こしてくれる。ズボンを履き、キッチンへと向かうと彼女の作ってくれた朝食が並んでいる。
一人暮らしを始めて、コンビニのパンばかりの僕には、久しぶりのまともな朝食にありつける。基本、料理の上手な彼女。軽い朝食でも、それは美味しい。
『ごちそうさまでした。』とお礼を言い、僕は帰る準備を始めた。向かったは玄関ではなく、裏の勝手口。
ここから出ると、僕の家との間にはブロックの塀があり、それを越えると我が家の勝手口となる。これが、近所の目には一番見つかりにくいルートと言える。
もちろん塀があるため、体の重めの香緒里さんでは無理なルートである。
一日ぶりに帰った我が家。少し懐かしい気もする。しかし、そこには誰も居ない。当たり前なのに、なぜか誰かここに居て欲しい気もするのでした。
仕事を終え、自宅へと戻ったのは午後6時30分。いつもと同じである。ここでお風呂を入れながらの夕食をとるのだ。
そんな僕はスマホを手に採っていた。LINEを開き、香緒里さんのことばかりを考えてしまう。
ここで『会いたい。』と送れば、彼女はいい返事をくれるに違いない。しかし、昨日泊まったばかりでもある。嫌われないか?と考えてもしまうのです。
同じ頃、香緒里さんもスマホを握っていた。隣の住人が帰ってきたのが分かり、すぐに手に持ったのだ。
彼女も同じだった。女の、それも年上の自分から誘うことには、なかなか抵抗があったのです。
そんな頃、香緒里さんの家のチャイムが鳴ります。彼女は僕であることを願ったようです。玄関を開け、その人物を迎え入れます。
『こんばんわ。来たんだけど、いい?』、それは僕でした。LINEを送ることが出来ず、強行をしたのです。
『今、帰ったの~?』と言った彼女ですが、もう30分以上も前に帰宅したことは分かっています。あえて、なのです。
香緒里さんはスリッパを出し、僕をリビングへと迎え入れてくれました。『ごはんは?なにか作ろうか?』と聞き、彼女は料理を作り始めます。
アッという間の完成。最初から、準備でもしていたようです。そして、茶碗につがれるご飯。炊飯器を見ると、中はとても彼女一人分の量ではありません。
どう見ても、二人分が作られています。
『香緒里さん?一緒に住まない?』、彼女の優しさ触れ、思わず出て締まった言葉です。もちろん、彼女は言葉を濁しました。
男に浮気を求められているのと同じだからです。しかし、『おじさんが戻ってくるまででいいから。』と言うと、彼女の顔が少し晴れます。
期間を決めたことで、彼女のしようとしている浮気が少しだけ緩いものに感じたようです。
そんな彼女から、ひとつだけお願いをされました。『避妊だけはお約束してくれる?赤ちゃんとか出来たら、大変だから。』、当然のことです。
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