私はイベントの状況を確認後、夕方6時半に会場近くにとっていたホテルにチェックインする。
夕食を食べ、シャワーを浴び、ホテルのガウンを着ながら一息ついていると、既に時刻は8時前になっていた。
ビールを飲みながらテレビを見ていると、30分くらいしてフロントから電話が入る。
フロント「吉田様、お連れの方がフロントにお見えになっております。ご案内してよろしいでしょうか?」
私「通してくれ。」
ピンポーン
フロントからの電話を切り、5分くらいして部屋のチャイムが鳴る。
私が部屋のドアを開けると、梢君が無言のまま1人で立ちつくしていた。
私「賢明な判断だ。」
私に促されるようにして、梢君は部屋へと入る。
私はソファーに腰かけて、呆然とした表情で立つ梢君を眺める。
夕方と同じく、白色の半袖デザインのTシャツにジーパンという動きやすい出で立ちだ。
まるで、このホテルに来るには似つかわしくない格好だった。
私「そんな格好でこのホテルに来るとは、なかなか勇気があるな(笑)帰りは、新しい服を用意しよう。身長はいくつだね?」
梢「…………149です。」
私「かなり小さいな。」
私はフロントに電話をかけた。
私「もしもし。2201号室の吉田だ。レンタル用のワンピースドレスで入荷したばかりの未使用の女性用ワンピースタイプのドレスを一着買い取りたい。……身長は149で色は落ち着いた色、そうだな、黒にしてくれたまえ。……金は定価の倍出そう。いくらかかっても構わない。あぁ、用意出来たら部屋に持ってきてくれ。」
私は電話の受話器を置いて、梢君に話しかける。
私「どうした?座りたまえ。」
梢君は無言のまま、ゆっくりとテーブルを挟んで私の対面に置かれた椅子に座った。
私「君が1人で来た、ということは、君達二人が出した結論は、私の提案を受け入れる、と理解していいんだね?」
梢「夫は……私が来ることに反対しました。けど、私が夫を説得して、私はここに来ました。」
私「ほぅ。ご主人は、私の提案を受け入れるつもりはない、と?」
梢「いいえ。私達二人のために、私も夫も吉田社長の提案を受けることにしました。」
次第に梢君の声に力が戻ってくる。
梢「本当に10年………勤めあげたら、賠償はなしにしてくれるんですね?」
私「あぁ、もちろんだよ。特に、君が私の提案を受け入れるならば、ね。」
梢「約束……お願いします。」
私「君が私を満足させて、更にご主人が今月中に仕事をたたんでうちの会社に来るならば生活も保証しよう。」
梢「………分かりました。社長の提案をお受けします。」
私「良い子だ。これで君達夫婦の生活は守られた。」
私はソファーから立ち上がり梢君へと近付いた。
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