私が社長応接室へと入るなり高橋夫妻は二人揃ってソファーに座り、頭を下げていた。
私「頭を上げて下さい。そんなことをしたところで時間は戻らない。」
二人は頭を上げた。
私「イベントは無事開催にこぎつけて、お客さんの入りも上々だと報告がありましたよ。」
高橋「そうですか……良かった……」
二人の顔に安堵の表情が浮かんだ。
私「まぁ、うちとしても今回のイベントで何とか利益はトントンくらいにはなりましたから。」
高橋「本当に申し訳ありませんでした。」
私「ビジネスは謝罪で済む話ではないんですよ。」
高橋「重々承知しております。」
私「ならば、どの様に責任を取られるおつもりで?」
高橋「今後I企画様からの受注は出来ないもの、と心得ています。」
私「ははは。そういう責任の取り方は私は求めているんじゃないのだよ。」
高橋「………損害…賠償ですか。」
私「その通り。イベントの利益はトントンだと話したね。しかし、本来君達のところで準備出来ていたならば、私の会社は利益を上げられた。」
高橋「しかし……何故か市場に花が流通してい……」
私「ごたくはいいんだよ。一度受注した以上は責任を持ちたまえ!」
高橋「…………おっしゃる……とおりです。」
私は手元の内線電話で経理に連絡し、高橋生花店への損害賠償請求を記した書類を持ってくるように指示を出した。
経理の担当者が応接室に入り、私に書類を手渡し部屋から出ていくと、私は二人に書類を提示した。
書類を見た瞬間、二人の顔つきが変わった。
高橋「い、1000万!そんな!」
私「これでも、抑えた方だよ?内訳は、花の差額がほとんどだよ。今年中に用意出来ないならば裁判でもして全てを差し押さえさせてもらうよ。その時は、それによって生じた訴訟費用も追加させてもらう。」
高橋君はソファーから立ち上がり、床に土下座する。
高橋「社長!どうか!どうか!今の私達にはこんなお金とても用意出来ません!I企画さんからの受注で今は食い繋げていますが、それでも生活はギリギリなんです!」
私「そんなことは私には関係ないことだ。」
高橋「ですが!私にはこんな大金は用意出来ないです!銀行からも、今の資産状況では、貸してもらえない!」
私「何度言えばいいんだ。だから、そんなことは私には関係のないことだ。」
高橋「社長!何でも致します!ですから、どうか、私達に猶予を!お願いします!」
二人揃って土下座をし、高橋君は私の欲しかった言葉を発した。
高橋「何でも?そうか。何でもするのか。ならば、奥さん、君の体で払ってもらおうかね。」
二人は揃って顔を上げて、私の顔を見つめていた。
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