「あの子たち、益々タカシさんのファンになったみたいですよ、、、何も言わないで会計して行くなんて、凄くカッコいいって、、、今どきそんな人どこにもいないって、、、」
「まあ、俺は古い人間だということだな、、、」
「ううん、そうじゃない、、、タカシさんは思いやりのある人だから、、、」
「それはないな、、、」
「あの子たち、、、お礼がしたいから、タカシさんの連絡先を教えて欲しいって、、、きっとタカシさんのこと誘う気ですよ、、、」
「おっ、それはいいね、、、で、どうしたの?」
俺はおどけてそう言った。
「知らないから教えられないって言いました、、、」
「えっ、、、」
「だって、そんなの絶対に教えたくありません、、、」
ナツナの機嫌が急に悪くなる。
「そんな、、、ナツナちゃん、冗談にきまっているだろう、、、」
「フン、どうだか、、、とにかく飲みに行きますよ、、、イッパイ飲んでやる、、、」
おいおい、さっぱり訳が分からない。
ナツナは本当にかなり飲んでいた。
強いと言っていい程に。
あれからすぐに機嫌もなおり、いつものナツナに戻っていた。
「タカコと本当に別れたんですね、、、」
しみじみとナツナが言った。
「ああ、、、結局は俺が捨てられたということだ、、、」
「それは違うと思います、、、タカコは本当はタカシさんのこと心から愛しているんです、、、でも、、、タカコは本当にバカです、、、」
「もうよそう、その話は、、、」
「そうですね、、、せっかく二人きりなんだし、楽しくしなくちゃソンですよね、、、」
何気ない会話の中にナツナの気遣いを感じ、沈みがちの俺の気持ちを温めてくれる。
そして波長が合うのか、くつろいだ気分にさせてくれる。
前にも思ったように、こんな女性が恋人だったら、そんな考えが頭をもたげてくる。
こんな素敵な女に男がいないわけがない。
肌つやも素晴らしく、男に満たされているようにしか見えない。
何気ない仕草にも、そのにじみ出る色っぽさを感じ、勝手にそう決めつけてしまう。
けれど酔って頬を染めたあどけない表情と、突き出した肉感的な胸がタカシの男を刺激する。
それを知らずか、酔ったナツナはタカシに打ち明け話をし始めていた。
「わたし、入社してすぐ、好きな人ができたんです、、、見た目も声も、性格も理想の人で本当にビックリしたんです。」
「へえー、、、ナツナちゃんに、そんな人がいたんだ、、、」
以外だった、、、
ナツナはもっと恋愛については慎重なタイプだと思っていた。
ナツナがそんなに夢中になった男が羨ましく
、嫉妬してしまう。
ひょっとして、その男が今でも恋人なんだろうか?
「わたし、告白する勇気が無かったんです、、、わたしなんか相手にされるわけがないと思って、、、」
なぜかナツナは俺から目をそらして話を続けた。
「わたし、それでもどうしても諦めきれなくてタカコに相談したんです、、、」
そんなこと、タカコから聞いたことが無い、、、
「そしたらタカコが二人の間を取り持ってくれると言ってくれて、、、わたし、それを信じて待ってたんです、、、」
何となくイヤな予感がした。
「それなのに、、、タカコがその人を好きになっちゃったって、、、、わたしに悪いと思ったけど、、、、、本当はタカコもその人が初めから素敵だと思っていて、話しているうちに益々好きになって告白してしまったって、、、その人も好きだと言ってくれたって、、、わたし凄いショックで、、、タカコは何度言もゴメンなさいって謝ってくれたけど、、、」
「それって、、、もしかして、、、」
「わたし、タカコに裏切られた気持ちで、、許せないと思いました、、、でも、、いくら怒ってもタカシさんがタカコを好きなら、、しようが無いと思ったんです、もうどうすることも出来ないって、、、」
やっぱりそうだったのか、、、
「ナツナちゃんの気持ち、、、全然知らなかった、、、」
思わず口にしていた。
「そうかも知れないと思うこともありました、、、てもあの時はわたしよりタカコを選んだんだと思って、、、本当に辛かったけど、二人を祝福しようと心に決めたんです、、、あれからずっと、、、それなのにタカコはタカシさんを裏切った、、、わたしは心の中ではタカコを許すことが出来ない、、、タカコはタカシさんを苦しめた、、、こんなことなら、タカシさんを絶対に渡したりしなかったのに、、、」
心の丈を口にして、ナツナは酔いつぶれてし
まった。
タカシはタカコのしたたかさ改めて感じていた。
タカコのことだ何もかも計算ずくだったかも知れない。
もしもタカコとナツナが反対の立場だったら?
ナツナはきっとタカコを裏切ったりしなかったと思う。
ナツナは自分の気持ちを押し殺して親友のために尽くしたはずだ。
もしもナツナが俺に告白してくれていたら、、、
今ではどうすることも出来ないことだ。
そう、もう終わったことだ。
でも、、、これから始めることは出来るかも知れない、、、そう思った。
つづく
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