『ごはん出来たってよぉ』
翌朝、由美が迎えにきた。
俺は誠治の部屋で誠治と、母は由美の部屋で由美と、その組み合わせで泊まっていた。
誠治は既に部活の準備を終えている、何でも 昼までらしい。
と言う事は 昼過ぎに誠治は帰ってくる。母は母で今日も別の友達に会うらしい事を言っていた。由美もきっと遊びに行くんでろう?、仮に居たとしても階段を挟んだ隣の部屋、何とかなるだろう?
「ゴメン由美、腹痛くてさ様子みるわ、言ってくんない?」
「悪いね」
俺は そんな事を考えて仮病を使った
「大丈夫?ケンにぃ」
誠治も由美も心配してくれていた。
『お腹痛いんだって?』
すぐに母が 上がってきた
「うん、何だろ?」
『母さん 断るから 病院行く?』
「いいよ 断らなくて、今度 いつ来れるか分かんないんだし」
「少し横になってれば 治るよ」
『そぅお?』
『正露丸か何か貰って来ようか?』
「うん、ありがと」
バタバタと駆け下りて、またバタバタと母が上がってきた
『はい、正露丸、それと水』
『すぐ飲みな』
『姉さんには頼んであるから、治まらなかったら すぐ言いな』
『分かった?』
「うん」
「大丈夫、これ飲めば‥」
『そう』
『ゴメン』
『ありがとね』
母は またバタバタと階段を降りて行った。
布団の上でボーッと天井を見上げた。
壊れた写るんですを握りしめて。
実は あのあと 伯母は カメラを持つのを忘れていた。
俺は それに気が付いていたが あえて言わなかった。
伯母も伯母で それなりに興奮していたのだろう?、そんな風に今になって思った。
もしかしたら まだ有るのかと 昨夜 こっそり探しに行った。
無造作に転がるカメラを回収して戻っていた。
しばらくして
「行ったきまーす」
と誠治が部活に行った。と、すぐに
『姉さん、ゴメンなさい』
『お願いしますね』
と母が出掛けた、母はバスで町まで出るらしい。
と、また すぐに 階段を上がってくる足音が聞こえた。
『おはよ』
『お腹痛いんだって?』
開けっ放しの扉をノックしながら 伯母が言った。
『大丈夫、ケンちゃん?』
そう言いながら扉を閉める音がした。
『本当に大丈夫?』
伯母が 覗き込んでいる
「うん」
「正露丸 飲んだから」
『そう』
『なら いいけど』
『ゆっくり寝てなさい』
『お腹すいたら言って、ね?』
「うん、ありがと」
「そんな事より伯母さん‥」
俺は 枕の下から取り出した 壊れたカメラを見せた。
伯母は ハッとした顔で 口元を押さえた。
『ちょっ』
『それ』
『やだ私』
明らかに狼狽えている。
「忘れたでしょ?」
『返して!』
「やだ!」
伯母が 手を伸ばした瞬間 俺はカメラを引っこめた。
『そんな壊れてんの どうすんの?』
『返して!』
「やだよ」
「全部は無理かもしんないけど、写真部の奴に頼めば何とかなるかな?って思ってさ」
『そんなの無理よ!』
『そんな壊れてんの もう どうにもならないわよ、返してよッ』
「どうにもならないんなら 伯母さんだって要らないんじゃないの?」
『そんな意地悪言うもんじゃないわ』
『お願い、返して』
「はい」
俺は 素直に伯母にカメラを手渡した、伯母は 拍子抜けした様な顔をしていた。
『びっくりさせないで』
『ケンちゃん、何か怖い事考えてんじゃないかって思っちゃったわよ』
『んとに もぉお』
「考えてるよ、怖い事」
『ちょっと ケンちゃん‥』
「なんてね‥」
「お腹 擦ってよ、伯母さん」
「お腹 痛いんだよ‥」
「カメラ 返したんだし その位 いいでしょ?、ダメ?」
『その位ならね‥』
と、伯母がタオルケットを捲った
『ちょっ、ケンちゃん‥』
異変に気付いた伯母が また口元を押さえた。
「さすってよ」
『お腹だけよ‥』
「いいよ、お腹だけで」
「その代わり 下の方まで 全部さすって」
『そんな事したら‥』
『・・・・・』
『ケンちゃん?、ケンちゃん もしかして お腹って‥』
「うん、痛くないよ」
「あれから ずっと こうなんだ‥」
「誠治に隠すのも大変だったし‥」
『ずっとって、そんな‥』
「さすってくれる?」
「さすってくんないんなら‥」
『・・・・・』
『分かった、分かったから‥』
『でも、今はダメ、片付けも有るし、由美もいるし』
「由美は 隣の部屋でしょ?」
「まだ下で テレビでも見てんじゃないの?」
『それは そうだけど‥』
『でも 今はダメ』
『ね?、あとで来るから』
「絶対?」
『必ず来るわ』
「‥分かった」
伯母が立ち上がり、扉に手をかけた時
「その代わり、スカートで来てね」
そう言った俺を キリッと睨んで 伯母は出て行った。
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