祖父母と由美と伯母と俺、5人で昼食をとった。
「どうしたケン坊、美味くねぇか?」
おじいさんに そんな事を聞かれた。
「美味しいよ」
「美味しいけど その‥」
そんな風に取り繕って 2階の誠治の部屋に上がってテレビをつけた。
見てもいないテレビの音、何を言ってるのかも分からなかった。
トイレでの出来事が 何度も何度も 頭の中を廻った。
中学3年、誰に教わるでもなく オナニーは覚えた。
今の様に情報に溢れた時代ではない、もっぱら週刊なんとかの雑誌を片手に‥。
グラビアに興奮し、見える訳などないのにミニスカートのページがあれば下から覗いた、小説を読みながら 情景を想像するも靄におおわれ その靄を晴らそうと ひたすら 妄想を繰り返した、そんな時代だった。
彼女らしき同級生は居た。
が、どちらかの部屋にあがる などという事もなく 公園のベンチが お決まりだった。
テレビをつけて どの位の時間が経っただろう?
『ケン坊、居る?、いい?』
伯母さんが扉をノックした。
「居るよ」
『さっきはゴメンね』
『私、その‥、限界で‥』
伯母さんは そう言いながら 扉をあけたまま 座った。
「さっきって?」
『トイレで‥』
「その事?」
「その事ならいいよ、伯父さんが帰ってきたら相談するから」
『あの人に相談って、何で?』
『何を相談するの?』
「何でって俺‥」
「伯母さんに オシッコするトコみられて‥」
「それに‥」
『見てないわよ私 オシッコするトコなんか』
『それに、それにって何よ』
「大っきくなってんのも見られて」
『大っきくって、それ普通の事よ』
『もう立派に毛も生えた 中学3年の男の子でしょ?、健康な証拠よ!』
「やっぱり見てたんだ?」
「あの時 オシッコ出てないもん俺、してないって言うか出なかったんだ、どうしてかは分かんないけど」
「それに 毛も生えたって どうして知ってんの?、見たからでしょ?」
『そ、それは想像よ!』
『中学3年にもなれば 皆が生えるんだろうなぁ?って思っただけよ』
「伯母さん、生えてた?、中3で」
『そんなの関係ないでしょ?』
『だいたい あの人に何を相談するのよ!』
『私にチンチン見られて恥ずかしかったとでも言うの?』
『そんなの信用しないわよ あの人に言ったって、絶対信用しないわ』
「由美が居たじゃん‥」
「伯母さんの前にトイレ行って、由美が出てきた時には窮屈だったじゃん 3人も居てさ」
そう言った瞬間 伯母さんの顔色が変わったのが ガキの俺にも分かった。
『そ、それは そうだけど、何も由美まで巻き込まなくても‥』
「伯母さんが 信用しないって言うから‥」
「由美も一緒に居たんだし あの時、だよね?」
『恐ろしい子ね ケン坊って‥』
『あの人には 言わないで!絶対!』
『で?、どうしたら あの人に黙っててくれるの?』
何やら伯母さんは勘違いをしている様だった。
恥ずかしくて オシッコが出ない事は これまでも有った。
が、恥ずかしくて 大っきくなってしまったのは初めてだった。
「みんなも そうなのか?」
と、恥ずかしくて勃つって何だよ?、そんな事を考えていた。
伯母さんが なんか勘違いしてるらしい事には気が付いた。
が、伯母さんの『どうしたら‥』に引っ掛かっていた。
俺は 別に 伯母さんに対して 何か企んでいた訳ではなかった。
が、以前から この伯母さんが 好きでは無かった。
毛嫌いする程でもないが 時々伯母さんが言う〔私は何でもお見通しよ〕みたいな上からの物言いが気に入らなかった。
この際、伯母さんの勘違いに便乗して 少し困らせてやれ、と考えた。
伯父さんに話されるのは困る、なので『‥どうしたら‥』なんだろう?、だったら ためしに‥と
「見せて、伯母さんも」
「オシッコするみたく 毛の生えてるトコ、それで おあいこ」
と、言ってみた。
この時脳裏に浮かんだのは 雑誌のモザイクだった。
あのモザイクが靄の原因なら その靄を晴らせるかも?と思った。
『本当に恐ろしい子ね、あなたって』
『伯母さんにも見せろって言うの?、出来る訳ないでしょ そんな事』
『そんなの 彼女に見せて貰いなさいよ、馬っ鹿じゃないの?』
『だいたい 幾つだと思ってるの私の事、あなたのお母さんよりも3つ上なのよ私、何も こんなオバサンの‥』
「‥そう」
「分かった」
『ちょっと 待って』
『待ってよ‥』
伯母さんは そう言うと 何やらブツブツ言いながら しばらく考え込んでいた。
『‥分かったわ』
『分かったけど 今 ここじゃダメ』
『由美だって居るし、お父さんお母さん(祖父母)も居るし』
『ね?、分かるでしょ?』
『だから、ちょっと 待って』
伯母さんは また ブツブツ言いだした、そして 続けた
『4時なら いいか?‥』
『4時に納屋の2階に来て』
『3時半ごろ お父さんとお母さんは畑にでるわ、由美には 何か用でも言いつけるわ』
『4時なら 絶対2人とも畑にいるわ、4時なら大丈夫』
と、また ブツブツ言ったあとに
『4時に納屋の2階に来て』
はっきりと そう 言った。
「母さん(俺の母親)は?」
『夕飯いらないって出掛けたわ』
『・・・・・』
『一回だけよ、見せるだけよ』
『分かったわね?』
伯母さんは そう言い残すと バシンと大きな音をたてて扉をしめて 戻って行った。
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