中学生の頃、近くの公園で見かけた髪の長い女の子。
年下なのにどこか大人びた、すごくキレイな女の子。
一目で恋に落ちてしまっていた。
いつの間にか彼女に会うために何度も公園に行くようになった。
ある日、勇気を出して声をかけた。
嬉しそうに微笑んで「わたしも話したいと思ってた。」と恥ずかしそうに言ってくれた。
それから二人は急速に接近した。
女の子は小学校の六年生でアイナという名前だった。
アイナはサトルのことをお兄ちゃんと呼んでいた。
いっぱい話をして、二人でいろんなところへ出かけた。
二人でいるだけで楽しくて、お互い子供ながらに幸せだった。
そんな日がずっと続くと思っていた。
三月ほどが過ぎた頃、別れは突然やってきた。
両親の都合でアイナが遠くへ引っ越して行くことになった。
最後の日、アイナは泣きながらサトルの頬へ口づけをしてくれた。
彼女にしてみれば精一杯の愛情表現だったと思う。
俺は涙をこらえてアイナをを見送ることしかできなかった。
甘くてほろ苦い思い出がはっきりと蘇っていた。
「こんなかたちで、お兄ちゃんに会いたくなかった、、、」
今にも泣き出しそうな声でアイナが呟く。
俺もそう思っていた。
信じることが出来ないぐらい恐ろしい偶然だ。
「そうだな、、、、でもアイナにまた逢えた、、、やっぱり俺は嬉しいよ、、、」
「わたしも、、、わたし、お兄ちゃんの名前を報告書で見て、、、すごくビックリして、、、あの人の浮気相手のご主人がお兄ちゃんだと知って、、、絶対に謝らないといけないと思って、、、でもヘンな女だと思われたらどうしようって、、、すごく怖かった、、、でもお兄ちゃんがわたしを覚えていてくれて、すごく嬉しい、、、会いに来て、本当によかった、、、」
「忘れるはずが無いだろう、、、でも本当にこんなことが、、、、」
サトルにしてもこんなかたちでの再会に苦いものを感じてしまう。
でも会えたことがやはりたまらなく嬉しい。
話したいことがたくさんある。
でももう時間も遅い。
アイナだってきっと子供のことが気になっているはずだ。
「アイナ、また逢えないか?今度は浮気の謝罪なんかじゃなくて、昔の友人としてたくさん話がしたい。今すぐでなくても、アイナが落ち着いてからでもいい、、、」
「わたしもいっぱい話したい、、、わたしから誘ってもいい?」
「もちろん、、、いつでもいい、明日だって、、、ずっと俺まってるから、、、」
「わたし、本当に明日誘っちゃうかもしれないよ、、、」
二人は連絡先を交換した。
アイナと別れ家へと帰る。
アズサにはあいたくなかった。
早く家を出てもらう。
なんなら自分が出ても構わない。
ケジメをつけてアイナと会うために、、、
つづく
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