目の前の女性の美しさに、改めて目が吸い寄せられる。
アーモンドのように美しく整った瞳。
ホンモノの長い睫毛に、優しさを感じさせるラインを描いた眉。
柔らかでいて筋の通った控えめな鼻に、程よい厚みのある色気をにじませた唇。
全てが完璧に造作された、どこから見ても良家の上品さを漂わせる美貌の人妻だった。
人妻は夫であるサトシの言動に不審なものを感じて、興信所に調査を依頼した。
その結果、夫の不倫が発覚し、自分たち夫婦の存在を知った。
居たたまれ無い気持ちから、突然のこととは思いながら、謝罪のためサトルを訪ねてきた。
この美しい人妻は気の毒になるほど何度も頭を下げ謝罪した。
「もうやめて下さい、、、奥さんに責任はありません、あなたも被害者だ、、、悪いのはあなたの夫であって、わたしの妻です、、、とにかく奥さんの誠意ははっきりと受け取りました、もう頭を下げるのはやめて下さい、、、」
少しだけホッとした表情を浮かべながら女が尋ねてきた。
「新道さんは、その、、、奥さまと、どうするつもりですか?」
「別れます、、、妻にはもう伝えてあります、、、」
そう言いながら昨夜のことが再び頭をよぎる。
どう考えてもあれは間違いだった。
後悔の念が押し寄せる。
「そうですか、、、なんて言ったらいいんでしょう、、、、わたしも今、息子を連れて実家に帰っているんです、、、わたしも離婚を考えています、、、」
その後、やはり気まずい雰囲気が漂い、当たり障りの無い話をして席を立つことにした。
でもやはり記憶の奥に訴えてくるものを感じる。
思わず強い瞳で彼女を見つめてしまう。
普通、夫の不倫相手の配偶者にわざわざ謝罪するために訪ねて来たりするだろうか?
どうしても腑に落ち無いものを感じてしまう。
後ろ髪を引かれる思いを押し殺して別れを告げる。
悲しげな瞳で彼女が見つめていた。
「お兄ちゃん、、、まだわたしがわからない?」
お兄ちゃん?、、、まさか?
「あのアイナ、、、、なのか?、、、」
つづく
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