サトルは仕事を終え、帰り支度をしていた。
仕事中に何度も昨夜のことを思い出した。
久しぶりのアズサとのセックス。
欲望に呑まれてしまった自分に後悔していた。
愛情のない性欲を満たすだけのセックス。
終わったあと、虚しさだけが残った。
もう二度としない、心に固く誓う。
できるだけ早くアズサには家を出てもらう。
それにアヤのこともある。
アヤは確かに魅力に溢れた女性だが、今はまだ真剣につきあうことは考えられない。
落ち着いてから、ゆっくり考えればいい。
会社を出てしばらく歩いたところで声をかけられた。
「新道さん、、、」
振り向くと女性が立っていた。
女にしては背が高く165はあるだろう。
肌が抜けるように白く、艶やかな黒髪が柔らかなウェーブを描き、肩先ほどの長さで揃えられていた。
年の頃はアズサより少し若く見えた。
女は息を呑むほどに美しかった。
顔色はすぐれなかったが、その美貌が損なわれることはまるで無かった。
ても相手の記憶がまるで無かった。
こんなに美しい女性を忘れるわけがない。
「どちら様、、、ですか?」
「失礼しました、、、わたし、黒岩アイナといいます。サトシの妻です。」
なんと女性はアズサの浮気相手の奥さんだった。
細身のしなやかそうな躰に、上品な服を身にまとい、貞淑な人妻の雰囲気を醸し出している。
その美貌から目を離すことが出来ない。
一度も逢ったことが無いはずなのに、なにか心の奥に訴えかけてくるものがある。
こんなにキレイな奥さんがいるのに、あの男は浮気を重ねている。
やり切れない気持ちになる。
立ち話もなんだということで、二人は近くのカフェに入った。
つづく
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