⑯…
日登美とリーマンのやり取りを黙って聞く章は、もうこの人がおばさんとハプるチャンスはないだろうなと思う。
リーマン「俺…日登美さんのような…可愛いらしい歳上が好物なんですよ…だから…あそこのプレイルームでエッチしませんか?」
リーマンの必死さが逆に章と日登美を引かせ始めている。
日登美「何言ってんの…この人、バカじゃないの…私は、あんたなんて好みじゃないし…なっ…何よこれ?」
その時、日登美に差し出すようにした千円札をリーマンが一瞬で一万円札に変えてみせたのだ。
手品なのはわかっているが、日登美はそれに食いつく。
日登美「えっ…えっ…凄い…どうやったの?章君も見てたでしょ…この人何なの」
リーマンは、黙ったままその一万円札を折りたたんで、握った手の中にしまいこみ、両手を日登美の前に出す。
リーマン「一万円はどの手でしょうか?当てたら日登美さんにあげますよ…でも外れたら…う~ん…そのグラスの中の氷を口移ししてもらいますよ…ンフフ」
日登美「その手には乗らないから…どうせ、どっちにも入ってないんでしょ…」
乗り気ではない日登美にリーマンは必ず手の中にあると言い、更に逃げるんですか…と日登美を煽る。
日登美「あっ…当ててやろうじゃん…え~と、どっちだ…う~ん」
リーマン(この人…本当に可愛いな…悩む顔も…はぁはぁ…早くチュ~したい…どんな味なんだろう…ンフッ…ンフフ)
日登美「あ~…もういいや、普通に考えたらこっちの手だし、意外にそのままとかだったり…やっぱり反対のこっち!」
選ばれた手をゆっくりとリーマンが開くと折りたたんだ札が姿を現し、日登美を喜ばせるのだが、それは五千円札で、正解は、マスターの手の中という落ちだった。
日登美「酷いな…マスターもグルか…もういいわよ…これ口移しすればいいんでしょ」
日登美は氷を口に咥え、顔をリーマンに近づけて行く。
ニヤニヤするリーマンは、近づいて来る日登美の顔を待ち構えていたのだが、もう少しというところで急に、日登美を強く抱きしめて唇を奪う。
日登美「んんっ…ん~ん~…んふっ…んっ」
リーマンの胸を手で押すように抵抗するのだが、びくともせず、日登美の口とリーマンの口が暫く繋がったままになってしまう。
ジュル…ジュルル…チュッチュプゥ~
静かな店内なのでその音が響き、ソファにいる人達は、その行為を見て、そっちでも始まったなと笑う。
リーマン(日登美さん…舌柔らかい…氷が溶けて…唾液と水が…ゴクリ)
章が席を立ち、日登美とリーマンの繋がる口をジッと見ていると、日登美の喉がゴクリと鳴り、リーマンの口がチュウ…チュウと吸うように小刻みに動いていた。
日登美(やだ…唾液飲んじゃった…あぁ…キス弱いな私…あっ…そんなに舌吸わないでぇ)
リーマンの顔がゆっくり離れると、その口は日登美の舌を引っ張り出すように咥えたままで、チュッチュゥ~っと吸い出す音がした後に、やっと咥えた舌を解放した。
日登美「はぁ…はぁ…あんた…次やったら殴るからね」
顔を歪めた日登美は、手で口を拭いながら口内を洗浄するようにカクテルを飲み、リーマンを睨む。
興奮したリーマンは、息を荒くして、睨まれている事などお構い無しといった感じで日登美に話し掛ける。
リーマン「日登美さんの唾液…さっ…最高に美味しかった…もっとしたい」
それを無視するように日登美は呆れた顔で、またカクテルを飲み干すのだった。
章(このデブに舌を吸われるおばさん…エッ…エロかったな…それにしても…おばさん飲み過ぎでしょ…俺なんか…そろそろ限界かも)
章が心配するように、日登美の酔いもかなり進み、正常な判断ができなくなってきているのは、自分でも気づいている。
日登美(そっ…そろそろ帰らんと…こんなに飲んだの初めてだし…あれ…誰かまたお客さんが?)
店内が急に騒がしくなる…
何事かと章と日登美が入り口の方を見ると、大きな声で喋る男が3人いて、ふざけながら店内に移動してきたのだ。
日登美「えっ…?」
カウンター席で驚く日登美と章に、入ってきた3人の中の1人が声を掛ける。
中仁田「章!え~と、それと友達の母ちゃん…そういえば名前聞いてなかったな…アハハッ」
日登美「ひっ…日登美です」
うるさいぐらい騒がしくなり、マスターは苦笑いしながら日登美と章に小声で話す。
マスター「もうお帰りになられた方が…この男性の数に、お客さんのように美人な女性が1人だと…ちょっと」
しかし、そのタイミングは既に失われていたのだった…
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