たとえユズルが俺を恨んだとしても、それでいい。
早紀みたいな女といてもユズルが苦しむだけだから。
スマホを手に、早紀をブロックする。
もうあの女に関わりたくない。
その時メールの着信音が鳴った。
『わたしのこと、覚えてますか?』
待ちに待った愛と名乗る人妻からのメールだった。
類の頭の中は一瞬にして、あの美しい人妻のことでいっぱいになっていた。
まずはすぐに返事をすることにした。
待たせると自分に余り興味がないんだと思われてしまう。
ただ食いつき気味の返事はいけない。
警戒されてしまう。
何気ないのがいい。
あれだけの女だ、絶対にミスは許されない。
『もちろんです。愛さんですよね。すごくキレイな奥さんだったから、よく覚えてます。でも連絡してくれるなんて思っていなかったから、すごく嬉しいです。』
力んだり、スレたところは絶対に見せてはいけない。
あの最高の人妻を手に入れるためには、とにかく焦らないこと。
メル友だけでいいぐらいの気持ちで進めるこれが大切だ。
類はそれを実行した。
当たり障りのない自分達の紹介や境遇、最近の出来事やり取りした。
愛は本名で8つ年上だった。
類は年下だが出来るだけ聞き役にまわることにした。
普通、人妻は友人が少なく、話を聞いてもらう機会が少ないはずだと考えたからだ。
以外にもというか作戦通りというか、先にメールのやり取りに物足りなさを感じ始めたのは人妻の愛の方だった。
見かけによらず、落ち着いたメール対応をする類を信用したのか、次からは電話でじかに話をしてみたいと愛の方から言い出した。
ただし電話をかけるのは愛の方からだけにして欲しいと念を押された。
やはりまだ警戒心があるようだ。
類は快く提案を了承した。
口にはしないが、これは類にとっては、好ましい展開だ。
当たり前かも知れないが、愛は夫に秘密で類との交流を深めようとしている。
それはなぜか?
警戒心の強い人妻の愛は、類が信用出来る男かどうか見極めたいのだ。
そしてその信用とは愛の肉体を求めたりしないということではない。
肉体の関係を結んでも問題の無い相手なのか?
絶対に他人に関係を漏らしたりしない口の堅い男なのか?
そして夫に知られないように、協力してくれるのか?
それを愛は確かめたいのだ。
類にはそれがよく分かっていた。
抜かりはない。
ここまでくれば自分からことを進める必要は無い。
ガマン出来なくなった愛の方からアプローチしてくるはずだ。
そしてその傾向はすでに現れ始めている。
あとはイザというときにタイミングを合わせればいいだけだ。
焦ったら、こちらの負けだ。
かつてのミスを思い出す。
綾乃という最高の人妻を手に入れた。
愛と同じく最高レベルの美しい人妻だった。
余りの嬉しさに有頂天になり、親友に見せつけてやろうと紹介したのが間違いだった。
親友は一目で綾乃の魅力の虜になり、1度だけでいいから抱かせてくれと、泣きつかれてしまった。
二人きりというのはどうしても許すことが出来ず、3Pならということで、1度だけ行為に及んだ。
その後、親友は秘かに綾乃と連絡をつけ、脅迫し、関係を続け、買春まがいの行為まで強要した。
綾乃の夫にことが露見し、すべてが類の責任にされ、類の両親の力のおかげでことは大事にいたらなかったが、類は最高の女を失ってしまった。
もうあんなつらい想いはしたくない。
そしてそれは二度目の愛からの電話での会話のときのことだった。
つづく
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