きっかけは社内のバーベキュー大会だった。
多くが家族で参加しているのに 静香は一人だった。
俺は さりげなく近づき、丁寧な挨拶とともに話しかけた。
最初は少し警戒されていたが、酔っ払った役立たずな男達を尻目に片付けを手伝ったことに好感を持ってもらえたようで、次の日からは笑顔で挨拶をしてくれるようになった。
しかし、ここで油断してはいけない。
初めてのメールは社内LANを使い、真面目な仕事の内容だけを送った。
いきなりプライベートに踏み込んだりはしない。
せっかく手に入れた好感度を 迂闊な言葉で下げるわけにはいかないのだ。
むしろ丁寧な言葉で仕事を依頼して誠実さを感じてもらい、仕事をしてもらえば その成果を必ず褒めて親密度を上げていく事に集中する。
時に恥ずかしいのをガマンして次の仕事への意気込みを語ると尊敬の文面が返ってきた。
弱音を吐けば励ましてくれたし、小さな苦難を わざと大袈裟に言っておいてから達成すれば褒めてくれた。
こうゆうのは回数が大事だ。
言葉と同じで、文字も繰り返せば繰り返すほど心に刷り込まれていく。
全員が必ずそうなる訳ではないが、最初はただの社交辞令だったとしても 何度も繰り返していくうちに、まるで自分の本音のように勘違いしていくのだ。
そうやって俺は3ヶ月をかけ、毎日ゆっくりと少しずつ近づいていった。
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