「ゴメン、出て、ノリちゃん」
『え?、私?』
『だってアレでしょ?、恥ずかしいじゃない!』
「しょうがないでしょ?」
「俺、こんなだもん?、お願い」
大根を おろしてる手を見せた。
『ケンちゃん?、お歳暮かしら』
『毎年 とどくの?、伊勢丹からみたいよ、それと2つも』
シブシブ玄関を受け取ったノリちゃんがブツブツ言いながら戻ってきた。
『ケンちゃんも送ったの?』
『そんな様子 全然なかったけど、ネットで送ったの?』
『でも 何で 同じ人から2つなのかしら?』
「まだ送ってないけど‥」
「まぁ良いじゃん、出来たからさ、先に食べようよ?」
『‥気になるじゃん?』
「‥良いから」
「食べてから開けようよ、冷めちゃえし、お鍋、ね?」
結局 ノリちゃんは 伊勢丹の包みが気になるなしく、洗い物モノもせずに 早々に まずは小さい方の包みから開けはじめた。
女性の習性とでも言うのか 伊勢丹の包装紙をキレイに畳んでから 段ボールを開けはじめた。
『何これ!』
『こんなの伊勢丹で売ってるの?』
『マジで‥!?』
その段ボールから出てきたのは 《し》やら リモコン色のローターやら ゴツくて太いバイブやら、電マやら‥‥。
『‥信じらんない』
『伊勢丹でなんて‥』
と、言っては1つ1つが透明なプラスチックのケースに入れられ、貼られているアピールポイントのキャッチコピーを声にだしながら読んでいる。
「んな訳ないでしょ、伊勢丹なんて」
「ほかにも、高島屋ふう とかもあっよ、ソレと悟られない様に工夫してんじゃん業者さんも」
『なになに?』
『誰だっけ?お笑いの‥』
「COWCOW」
『そっ、それ』
『伊勢丹の袋でーす、とかって。そう言う事?』
「考えてんでしょ?、売り上げ上げようって」
『この大っきい方も そうなの?』
「そっちが お2人様用かな?」
「開けてみて」
『お2人様って‥』
ブツブツ言いながら 伊勢丹ふうの包みを破いた。
同じようにアピールコピーの張られたケースを並べてゆく ノリちゃん、次第に言葉を失ないながら、1つ1つプラスチックケースを無造作に開けてゆく。
『この お尻の栓は分かるけどさ、何て長さなの このウナギみたいの、太さは幾らか違うみたいだけど、両方に付いた頭だって 何でこんなにエラが張ってんの?』
ノリちゃんは 片方の《頭》をつまんで高々と持ち上げて見比べている。
『アナルパールだって、何これ!、デッカイのと小っちゃいのと交互になって、電マに飛びっ子に‥』
『どんだけ買ったの!?』
『幾らしたのよ!、ったく』
「幾らしたかは秘密だけどさ」
「知ってんだノリちゃん、全部、名前も、ふぅん、知ってたんだ?」
『そこはツッコなくて良いの!!』 『馬ッ鹿じゃないの?こんなに!』
「要らない?」
「要らないんなら捨てる?、燃えないゴミで良いんだっけ?」
『そんな事 言ってないわ!』
『何も捨てなくたって‥』
『‥勿体なでしょ?』
『それに 何?、この 絡み付くヒダヒダとかローリング何とかって?、これアレでしょ?男の人が使うオナホとかってヤツでしょ、こんなのまで買ったの?、それも2つも!』
『そんなにご不満なんですか?私じゃ!、信じらんない!!』
「サービスだってさ、それ」
「お選び頂けますって、書いてあったからさ」
『‥だからって何もさ』
「‥ちょっとね」
「良からぬ事 考えついてさ」
『何?、何なの?』
『正直に言いなさい!』
「それは お楽しみって事で‥」
「そろそろ電話しないと寺崎さんトコ、ね?」
「‥にしても ホント良く知ってんねノリちゃん」
『うるさい!』
『電話したら!』
ノリちゃんは プンプンしながら 洗い物に立った。
俺は寺崎さんのご主人に発信すると すぐにスピーカーにした。
〔もしもし?〕
意外にも 電話に出たのは 奥さんの幸子さんだった
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