『ええ、おりますけど‥』
『はい、ちょっと待って下さい』
『温泉 行かないか?って、奥さん』
「いつ?」
『暮れの‥‥』
『????』
「代わろうか?」
『もしもし?』
『ちょっと待って下さい、主人に代わりますね』
結局 向こうも ご主人に代わったのだが、話しの内容は こうだった。
12月30日、1泊で温泉に行かないか?
と、言う事だった。
[ホントは城ヶ崎あたりで初日の出、と思ってたらしいが、さすがに このご時世 他県ナンバーが彷徨くのは気が引けた。で、先日 一緒になった温泉より もう少し山あいの温泉街で宿を探した、何とか2部屋とれたのが30日で、貸し切り露天風呂も押さえた]
と言う話しだった。
「私たち夫婦は大丈夫です、ご一緒させて頂きます」
「ですが、もう1人ふえても大丈夫でしょうか?、普段から私たちを兄や姉の様に慕ってくれてる女性がおりまして、出来れば一緒に‥と。そのお返事は そうですね? 土曜の この時間に お電話させて頂きますので‥」
「はい、では土曜日に改めて‥」
「失礼いたします」
と、電話を切った。
『何その、兄や姉の様に慕ってくれてるって、由美ちゃんでしょ?』
『良く 咄嗟に そんな事が ペラペラペラペラ出てくるわね?』
『何か良からぬ事 企んでんでしょ?、ケンちゃん』
「良からぬ事 企んでんのは 向こうだと思うよ」
「でなきゃ 2部屋予約してから 聞いて来ないでしょ?」
『それもそうね?』
『決まってから探すわよね 普通』
「でしょ?」
『で?、幾らだって』
「ゴメン、聞くの忘れた」
「寺崎さんも言わなかったし」
『そ言えば 奥さんも言ってなかったわね、でもさ 由美ちゃんには何て言うのよ?』
「彼女に 出せとは言わないよ」
「聞いといて明日、土曜の夜に返事しなきゃならないからって、ね?」
『もお、聞いとくけどさ‥』
『ケンちゃんの おごり って言っちゃうよ、良いの?』
「良いよ それで」
『知らないわよ、1人2万とか言われても、良いの?』
「だぶん キャンペーン使ってると思うんだけどな‥?」
「ま、そん時は そん時」
「聞いといて」
由美ちゃんからは〔明日の朝まで待って〕と言われたらしいが 結果 一緒に行く事となった。
が、逆に 由美ちゃんからは
〔クリスマス、邪魔しに乗り込んでも良ぃい?〕と聞かれたらしい。
『邪魔しにじゃなくて、ヤられにでしょ?、いつでも いらっしゃい!って答えてやったわ』
とドヤ顔をしていた。
そんな 慌ただしさの中で 迎えた週末、再配達を頼んでおいた土曜の夕方に、[宅配便でーす]とチャイムが鳴った。
ようやく ようやく《し》が届いた。
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