『おッはよ』
まるで口紅を舐め取るかの様な長いキスのあとに 息を切らせながら ノリちゃんが言った。
由美ちゃんが 俺のあとをついて リビングに入ってくると すぐに ノリちゃんがマスクを剥いで襲った。
〔どうしたの?、ノリちゃん?〕
『ん?、少しずつ返して貰うって言うからさ ケンちゃん』
『私も少しは手伝ってあげようかな?、って』
「早速?」
「どんな感じだったかも見てないんだけど俺」
『いいじゃない、車の中で直せば』
『荷物は?』
〔車の中‥〕
『お茶にする?』
『それとも すぐ出る?』
「行こうか?」
ノリちゃんは バッグと白いコートを肘に掛けた。
俺は ボディバッグをたすきに掛けて キャリーケースを引いた。
そのキャリーケースの手柄には 俺のダウンとノリちゃんのダウン。
勿論、それに隠れて ケースと同柄の小さなバッグ、そのなかには 有りったけのオモチャを詰め込んで。
駐車場、由美ちゃんの車と 俺の車を入れ替えて高速を目指した。
と、高速に乗ってすぐのPAに寄った。
〔ノリちゃん、どうしたの?〕
〔真っ白いウールのコートなんて‥〕
『‥でしょ?、何だか お付きの人でも居るみたいでしょ?、いらないって言ったのに』
『こんな時でもないと着れないからさ、こんなの』
「こんなのは ひどくない?」
〔買って貰ったの?〕
〔ケンさんに?〕
『そうよぉ』
『羨ましい?』
〔・・・・・〕
そんな話しをしながら喫煙所に向かった。
『さすがに年末ね‥』
『こんなご時世でも ソレなりに人は居るのね?』
「俺らも ソレの1人だけどね」
「飲み物買って、行こうか?」
『でも意外ね』
『ケンちゃんが 何んにも おイタしないなんて』
『有りったけ 詰め込んでなかった?、オモチャ』
車に乗り込むと 開口一番 ノリちゃんが言った。
〔そうなの?〕
「んーン?なんだろ?」
「多分、想像どおりだとは思うんだけどさ、温泉に誘われたのも‥、その‥寺崎さん、でもさ‥」
『でも、何ぁに?』
「もし ハズレてたらさ‥」
「中途半端になっちゃってさ‥」
「人出も なんだかんだ有るし、生殺しぃ!、とか絶対キレそうだし ノリちゃん、でしょ?」
『そりゃ 中途半端にされればね』
『だったら 別々の部屋で良かったじゃない?』
「でもアレでしょ?」
「ノリちゃんも そう思ったから反対しなかったんでしょ?、違う?」
『だって あんな格好してたのよ‥』
『電話してた時だってさ‥』
『誰だって そう思うでしょ?』
〔なになに?〕
〔話しが全然みえないんだけど‥〕
『あのね、これから会う 寺崎さんの奥さんがね、初めて会った時 凄かったのよ』
〔凄かったって?、何が?〕
『凄いって言うかさ‥、考えらんない格好してたの』
『道の駅でさ 軽くご飯したんだけど、スパッツなのかな?、ふつう隠すじゃない?ワンピースとまではいかなくても長めのヤツで お尻周りとか』
『でもね、上も短くてさ‥、こんもり盛り上がってんのが分かるのよ お股がさ、もちろん まんスジ とかまでは浮き出てないわよ』
〔まんスジって〕
由美ちゃんは口元を押さえた
『まんスジはまんスジよ!』
『何 ブリっこしてんの今更』
『ほらッ、インスタとかで有るじゃない?パッツパツの格好してさ 身体のライン強調してさぁ‥』
『まる分かりなのよ奥さん、こんもり盛り上がっちゃって‥』
〔もりマンって事?〕
『もりマンでも 土手でも 恥丘でも何でも良いけどさ、隠すでしょ?』
〔‥そうね〕
『‥でしょ?』
『電話してた時だってさ、何だか怪しい息づかいしてんのよ』
『もう そうとしか思えないの!』
『おかげで しゃぶらせられたわよ!
、ね?ケンちゃん?』
〔ケンちゃんが話してる時に?〕
〔‥電話で?〕
『そうよ』
〔そうよ、って‥〕
〔じぁぁ、私が電話かけ直して すぐケンさんに代わった時も?〕
〔あの時も?〕
『そうよ』
『由美ちゃんと電話してる ケンちゃんを しゃぶってたわよ、いけない?』
〔いけない?って‥〕
〔ズルい、それ!〕
『いいでしょ別に!』
「まあまあ‥」
「あの‥、多分だよ‥」
「多分って言うより 妄想だけどさ 俺の‥」
〔何?〕
『なになに?』
「70までって思ってたけど リタイアしたって言ってたじゃん?」
『何か 身体もあまり良くないとか』
「多分だよ、多分だけど、旦那さんが苦労してるんだと思うんだ‥」
〔苦労って?〕
「糖尿がキツイって言ってたよね?」
『言ってたわね‥』
「完全に不能かどうかは分かんないけど 役にたたないんじゃないかな?」
「で、刺激を求めてって言うかさ‥」
「奥さんに あんな格好させたり‥」
『じゃぁ何?』
『スワッピングって事?、その為に誘われたの?、お金も要らないって』
『私が ご主人の しゃぶるの?、やぁよぉ そんなの』
〔‥どうかしら?〕
「だよね?、由美ちゃん?」
〔いざ始まったら どうなる事やら ノリちゃん、フフフ〕
『あのね 由美ちゃんッ!』
〔でも それじゃぁ、お邪魔なんじゃ?私〕
「そんな事は無いと思うよ」
『でなきゃ 6人部屋なんて取らないか?』
「‥たぶんね」
「匂いで感じ取ったんじゃないかな あの奥さん、同類かも?って」
〔奥さんが?〕
『ご主人じゃなくて?』
「鈍感なんだよ 男って‥」
『そうね、それは間違いないわね』
『でも 何の同類なの?』
「‥変態の」
〔うん!、変態!、みんな〕
「誘導されてんじゃないのかな?、旦那さんの方が」
『奥さんに?』
「そう思うんだけど‥」
〔怖い怖い!〕
〔本当、女って怖いわよねェ、フフ〕
『ソレ私に言ってる?』
「まぁまぁ、その辺にしてさ、そろそろ お昼に しようか?」
「何処にする?」
この ご時世の割には ソレなりに渋滞も有った、PAを出てから2時間以上たっていた。
俺は 湖の駐車場に車を停めた。
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