[メリークリスマス!]
12月25日の朝、数多く居る外国籍の人々が そう声を掛け合いながら タッチを交わす者 ハグをする者、駐車場 通路 工場内と あちこちで見受けられた。
〔帰りさ 車で待ってて、大丈夫?〕
『なになに?、プレゼント?』
〔そう〕
『なら一緒に帰ろ?、私たちも持ってきたから』
例によって 俺の後ろでラジオ体操をしている2人から そんな会話が聞こえてきた。
〔でも良いわね?〕
〔2人とも28日は来ないんでしょ?〕
『そうよ、月曜だけなんて出てきてらんないわ、ねぇケンちゃん?』
「て言うか、毎年だし俺」
「文句言われながら 半日も掃除したくねぇし、一年目の年末だけだね、出勤したの」
〔私 有給ピンチだからさ〕
〔3月には卒業式とか有るし〕
〔残しとかないと‥〕
そんな話しをしながら 仕事終わりに3人で駐車場に向かった。
〔でも良いの?、車まで乗せてって貰って〕
『だから 明日にしようって言ったじゃない?』
〔ゴメンね〕
〔30日と大晦日 私1人が家空けるなんて初めてだからさ、(土)(日)と29日で大掃除と買い出しと お正月の準備とか終わらせとかないと〕
『宿題したの?、なんて言ってる手前 しめし付かないか お母さんとしては、ヤること やらないと』
〔ま、そんなトコね〕
〔ノリちゃん達は?、準備とか掃除とか いつするの?〕
「特に何もしないよ」
『前もって ほのかの お年玉 春佳に渡しとく位かしら?』
『掃除ったって 引っ越して間もないしね、誰かさんが垂らした シミくらいだからさ まぁ これが一番大変なんだけどね』
〔もぉお!〕
『おせちも スーパーのパックで良いって言うし、ケンちゃん』
『温泉で贅沢させてもらうしさ』
〔温泉て言えばさ 幾らだって?〕
「それがさ、そこは気にしないで下さいの一点張りなんだよ旦那さん」
「幾っくら聞いても 教えてくんないだよね」
『(車)乗って』
『大きいのが私から』
『で、小さいのがケンちゃんから』
『フフ、楽しみね』
〔何その フフって〕
〔何だか怪しい〕
『怪しくなんかないわ、きっと楽しんで貰える物よ』
〔何それ、よけい怪しいわよ!、楽しんで貰えるなんて〕
〔でも ありがとう〕
〔こんな歳になって プレゼントの交換なんてするとは 思ってもみなかったわ、ところで30日は?、何時に行けば良いの?〕
「9時には出たいかな?」
「湖でも寄って、お昼食べて、3時には着くでしょ?、幾ら混んでも」
『大丈夫?、3時に着ける?』
「夕飯は6時だって言うし、露天は8時らしいし、4時でも5時でも構わないって‥旦那さん、大丈夫でしょ?」
『なら良いけど‥』
『‥だってさ、由美ちゃん』
〔‥分かった〕
「お待たせ、着いたよ」
〔待ってて、取ってくる〕
由美ちゃんが自分の車から 色ちがいの袋を下げて戻ってきた。
〔こっちがケンさん〕
〔こっちがノリちゃん〕
〔喜んで貰えると良いけど‥〕
『ありがとう』
「ありがとう、キレイにしてきてね」
〔????〕
〔ありがとう〕
〔30日9時ね、ありがとね〕
『何なの?、キレイにって』
『何 あげたの?』
車を走らせると すぐにノリちゃんが聞いてきた。
「ん?、口紅だよ」
「いけなかった?」
「少しずつ返して貰うけどさ」
『ホント、良く そんな事が 真顔で サラッと言えるわね?』
「意味 分かったんだ?」
『映画だか何かの台詞になかった?』
「‥だっけ?」
「‥にしても、今夜は月が綺麗ですね?」
『‥ハアァ?』
『月なんて出てる?』
「そこは 知らなかったんだ?」
『なになに?』
『何か 意味が有んの?今の』
「さぁ? どうでしょ?」
12月30日、8時40分。
チャイムが鳴った。
玄関ドアを開けると 当然 そこには由美ちゃん。
「キレイにしてきた?」
俺は おはようの前に あえて そう聞いた。
由美ちゃんが 頬を赤らめたのがマスク越しでも分かった、 そして そのまま下を向いた。
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