その日の俺の運勢は最悪だった。
そうとしか思えないほど、全ての偶然が最悪の形で重なり合っていた。
その中の一つだけでも違っていたら、俺は真実を知らずに済んだかもしれない。
エレベーターから降りてきた男が1人なら、早々に意識を逸らしていただろう。
こちらに向かって歩いてこなければ、俺は歩くスピードを落として距離をとったはずだ。
1人が若々しいスーツ姿の青年で もう1人が作業服の中年後とゆう不自然なコンビじゃなければ、俺は逃げ去ることにだけ集中し、その会話を聞いたりはしなかった。
「じゃ、何回も参加されてるんですか?」
若い男は緊張した声で中年男に話しかけていた。
「まぁな」
「俺たちが最初ですよね」
「だろうな」
「次の人が来るまで頑張らないと」
「楽しんでりゃ、時間なんてすぐに経つさ」
そんな意味のわからない会話のあと中年男がドアノブに手をかけ、男達は部屋の中に消えていった。
俺はエレベーターを通り過ぎ、そのまま男達が消えた部屋の扉を見ながら呆然としていた。
何回も、参加、俺たちが最初、次の人、、、
頭の中を、複数の疑問がグルグルと回っていた。
1時間以上、そうしていただろうか。
視線の先で、またエレベーターが鳴った。
男が降りてくる。
顔は見えなかったので年齢は分からないが、軽薄な服装の男だ。
その男が扉をノックすると、数秒後に扉が開く。
開けたのは最初の中年男だった。
肩までしか見えないが、すれ違った時に着ていたシャツは見えなかった。
なぜか何も着ていないのだろうと思った。
無言で男が部屋に入っていった。
そんな事が、夜8時までの間に3回あった。
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