チェックインが開始されたばかりのホテルの廊下に人気はなく、物音すら聞こえなかった。
無意識に足音を立てないよう、妻がどの部屋にいるのか見当もつかないまま廊下を歩いた。
いつまでそうしていただろうか。
諦めることも逃げることもできず、数え切れないほど廊下を往復し続けていると、エレベーターがポーンと鳴った。
飛び上がるほど驚き、同時にパニックになった。
廊下に隠れられる場所はなく、俺は咄嗟にエレベーターに向かって歩いた。
我ながらいい思いつきだと思っていた。
これならばエレベーターから降りてきた人がこちらに来ても、俺は奥の部屋から出てきてエレベーターに向かって歩いている宿泊客に見えるかもしれない。
その人の部屋が向こう側でもエレベーター前で立ち止まってやり過ごせばいいだけだ。
俺は、自分の今日の運勢が おそらく人生で一番最悪だとゆう事実に気づかず、自分のした咄嗟の判断を自分で褒めながら歩いた。
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