新一は気づいていた。
愛が声をこらえて泣いているが背中越しに伝わってきた。
元々俺に抱かれる気なんてなかったくせに。
そして明日、奴に抱かれるくせに。
愛の考えていることがさっぱり分からない。
今夜、俺に抱かれることで、明日の不倫を思いとどまろうとしていたのか?
それとも俺に抱かれたことを免罪符にして、奴に思い切り抱かれようという心積もりだったのだろうか?
俺も意地の悪い男だと気が滅入ってくる。
こんなことをするんじゃ無かったと思いながら、いつの間にか眠りに落ちていった。
翌朝、気まずい雰囲気のまま二人は朝を迎えた。
新一はあまりにも身勝手だった自分の考えや行動に嫌気がさしていた。
仕事の出がけに愛に声をかけた。
「昨日はゴメン、、、今度埋め合わせに二人で旅行でもしよう、、、」
愛の表情が一変して明るくなる。
「うん、わたしも行きたい、、、」
「今夜はゆっくりしておいで、、、」
「うん、、、ありがとう、、、新一のことすごく愛してる、、、」
「俺もだよ、、、」
新一は家を出た。
言葉と裏腹に心は冷えていた。
愛の嬉しそうなあの顔。
俺の言葉を、互いに愛しているという言葉を免罪符にして凌馬に逢いに行くのだ。
つづく
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