怒りも嫉妬も覚える余裕などなかった。
あのオレに一途な愛が、あまりにもあっけなく浮気をした。
あのオレしか男を知らない愛が、いとも簡単に他の男に、凌馬に躰を許してしまったのか?
早すぎる。
それにしても展開が早すぎた。
どうしても信じることが出来ない。
「お前、、、まさか、無理矢理、、、」
「違う、、、違うんだ、新一、、、、話を聞いてくれ、、、」
あの日、営業で近くに来ていた凌馬は、新一たち二人に会っていこうと家に寄った。
時間は夕方の7時を過ぎていた。
新一が出張中だと知らなかった凌馬は、また来るよと愛に告げ帰ろうとした。
せっかくだからと言って愛に引き止められ、冷たいものだけでも飲んで行くように言われて、少しだけおじゃますることにした。
何気ない会話をしているうちに、愛の表情に色気が帯びてきているのを感じ、凌馬は思わず愛を口説きたくなってしまった。
だが、新一がなにも知らずに、出張中であるのを考えると気が引けてしまい、帰ろうと思いたったときだった。
愛が汗をかいたから着替えたい、少し待っていてねと言って席を外した。
それまで愛は、あまり躰のラインが出ない部屋着を身につけていた。
エアコンが効いた快適なリビングにもかかわらず、何故か二人は汗をかいてしまっていた。
着替えを終えてきた愛を見て、凌馬は度肝を抜かれていた。
愛はスケスケのナイティーを着ていた。
下は膝上までしかないベビードールのようなもので、黒いブラとショーツが透けてはっきりと見えていた。
広く開いた胸元は深い胸の谷間を、誇らしげに見せつけていた。
言うまでもなく愛は凌馬を明らかに誘っていた。
凌馬は愛の躰から目を離すことが出来ず、生唾を飲み込んだ。
「ゴクッ、、、愛ちゃん、、、それは、、、」
「凌馬さん、、、すごい、見すぎだよ、、、、」
「だって、、、愛ちゃん、セクシー過ぎるよ、、、
すごく奇麗だ、、、、オレ、、、」
愛は頬を染め、濡れた瞳で凌馬を見つめていた。
「見るだけだったら、いいよ、、、」
囁くような甘い声だった。
「オレ、、、やっぱり帰るよ、、、、愛ちゃんを見ていたらガマンが出来なくなる、、、」
「、、、お願い、帰らないで、、、、いいよ、、、ガマンしなくても、、、」
凌馬は気がついた時には、愛を抱き寄せ唇を奪っていた。
愛は凌馬を自ら寝室へと案内し、二人は結ばれた。
ショックだった。
話を聞く限り、完全に愛が凌馬を誘惑している。
しかも信じられない程、積極的に、、、
「怒っているか?新一、、、」
「いや、、、お前は約束を破ったわけじゃない、、、チャンスをうかがう、、、そうだったよな、、、思ってた以上に早くチャンスが来ただけだ、、、」
凌馬はホッとした顔をした。
「それに新一、オレが言うのもヘンかも知れないけど、愛ちゃんを責めないで欲しい、、、キスをしたオレが悪い、、、それと、、、お前がしてくれた話が、かなり効いていたと思う、、、、あれでオレに興味を持ったんだと思う、、、」
いやそれだけではないはずだ、元々愛は凌馬に好意を抱いていた。
それはオレも以前から気づいていたことだ。
そして、凌馬はとうに知っている。
愛が凌馬に抱かれながら、前から好きだったと告白したかも知れない。
凌馬はオレに気遣い、黙っているのだ。
やはり凌馬はいいやつなんだ、、、
もちろん凌馬を憎むことなど出来ない。
愛に対しても、割り切れない思いはあるが、憎むことはよそうと思った。
元々セックスに貪欲な愛に、そそのかすようなことを言ったのは自分なのだから。
愛につらくあたるのはよそうと心に決める。
だが凌馬に聞きたいことは山ほどあった。
つづく
※元投稿はこちら >>