残業だった。
凪は同じ課の拓人の妻の詩織と二人きりだった。
時間は夜の十時になろうとしている。
明日の会議の資料にミスを見つけた凪が、差し替えの作業をしているのを詩織が手伝ってくれていたのだ。
「詩織さん、ありがとうございました。あとは一人で大丈夫です。こんなに遅くまで、すいません。」
「何言っているの、二人でやったほうが早いでしょう。もう少し頑張りましょう。」
「でも、、、拓人が一人で待ってますよ。」
「ほんとうに、待っているのかしらねぇ?」
そう言って、わずかに表情を曇らせる詩織の顔を見つめる。
詩織は本当に美しい。
女優顔負けの美貌だと思う。
切れ長の目に上品に整った顔立ち。
長めのウェーブがかかった艶のある黒髪が、大人の女の魅力を際立たせていた。
スタイルもバツグンで、女性にしては長身で、手足もすらりと長い。
細身の体型だが、胸とお尻にはみっしりとした肉感があった。
強いて言えば、女優の広○○子ばりの魅力的な女性だ。
初めて教育係として会ったとき、本当にこんなに美しい女性がいるんだと感心したのを覚えている。
あまりに美人過ぎて一見冷たそうに見えるが、凪にはずっと優しく接してくれる。
仕事もバツグンに出来る、頼りになる先輩だった。
凪には唯がいたが、詩織は憧れの女性だった。
そんな詩織が唯との結婚式で親友の拓人と知り合い、その一年後に結婚したときはビックリした。
詩織は自分と住む世界が違うと思っていた。
それが自分の友人と結婚した。
凪は喜んだが、心の奥で、それならオレにもチャンスがあったんじゃあないかと、不埒なことも考えたりしていた。
でもオレには唯がいる。
詩織さんは永遠の憧れでいいと思っていた。
つづく
※元投稿はこちら >>