「凪よ、全部凪のもの、、、本当よ全部、凪のもの、、、」
昔のわたしだったら間違いなく、わたしはわたしのものと答えていた。
わたしは変わった。凪を知って変わった。
凪に同じことを聞きたいと思う。
ても聞くことは出来ない。
答えは分かっている。
絶対に詩織のものだと答えてくれる。
ても出来ない。彼には娘の優香がいる。
詩織の瞳から涙がこぼれた。
いつ以来だろうか、わたしが泣いたのは。
必死になって声をこらえる。
初めて見る詩織の涙に驚いた凪は、オロオロとしていた。
泣いている女性に対するスマートさなど欠片もない。
ひたすら詩織に謝り続けている。
詩織は凪の胸に抱きついた。
凪に涙を見せたくなかった。
凪は優しく詩織の背中と頭を撫でながら、ひたすら謝り続けていた。
まるで詩織に降りかかる悲しみは、すべて自分のせいだと言わんばかりに。
凪の温かさが伝わってくる。
凪はわたしを愛してくれている。
オロオロした凪も、スマートさのない凪も好きだ。
いや、きっとだからこそ凪が好きなんだ。
詩織の涙はいつのまにか止まっていた。
詩織は急に恥ずかしくなって、顔を洗ってくると言い、その場を離れた。
つづく
※元投稿はこちら >>