凪は詩織の自宅を訪れた。
夫の拓人は韓国に長期出張中だった。
詩織が手料理をご馳走したいと言う申し出を、喜んで受け入れた。
凪は休日出勤と偽り、朝早く家を出た。
唯もバイトの女子会だと言って、優香を実家に預けて出かけると言っていた。
詩織の手料理はビックリするほど美味しかった。
ヘンに細々していないのも凪の好みだった。
とにかく味がバッグンだった。
「凄いです、すごく美味しい、、、」
子供みたいに喜んで食べる凪を、詩織は目を細めて嬉しそうに見つめていた。
「嬉しいわ、、そんなに喜んでくれて、、、」
「本当に、詩織さんって完璧ですよ、、、もうパーフェクト、、、」
「う、嬉しいけど、、なんか表現が古くない?」
「うっ、すいません、、、でも本当に詩織さんは凄いです、、、、、、」
少し落ち込んだように見える凪に詩織が尋ねる。
「どうしたの?何か気に障った?」
「いや、、、、オレ、あの時、勇気を出して告白していたらって、、、、考えてもしょうが無いことだと分かっているんですけど、、、でも詩織さんを知れば知るほどオレの理想の女性だし、、、」
「すごく嬉しいよ、、、それだけでわたしは十分だよ、、、凪にそう言ってもらえるだけで、すごく幸せ、、、、ごめんね、わたしがヘンなこと言ったから、、、告白されていたら、受け入れたなんて言ったから、、、でも本当だから、凪にはウソをつきたくないから、、、でもごめんなさい、、、」
あの一見気の強い詩織が、自分にこんなに素直に話してくれるのが嬉しかった。
「ううん、オレがヘンなことを言ったから、、、ごめん、、、」
「ぜんぜんヘンじゃ無いよ、、、凪が本当にわたしを思ってくれて、すごく嬉しい、、、」
顔が赤らんでいるのを隠すように、食事の後片付けをしようとする手を凪が押さえつけていた。
本当に詩織は優しい。
そんな詩織が愛おしくてならない。
「詩織、、、詩織は誰のもの?」
こんなことは聞いてはいけない、ても聞かずにはいられなかった。
詩織の体がピクリと震える。
凪は今、本当にわたしを、わたしという女の存在だけを求めてくれている。
歓びが全身を駆けめぐる。
強い瞳で凪を見つめていた。
つづく
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