詩織は自分の気持ちを隠して、凪と家族ぐるみの付き合いを重ねた。
唯とも友人のように仲良くなっていた。
さすがに二人のあいだに娘が生まれたときは内心つらかったが、時間が経つと不思議なことに、可愛くてしょうがないと思える自分がいた。
まるで凪と自分のあいだに生まれてきた娘のように思え、接するようになっていた。
そのせいか、娘の優香は詩織にとてもよく懐いている。
それが詩織にはとても嬉しく感じていた。
夫の拓人も子供を欲しがっていた。
詩織も欲しい気持ちはあった。
でも女というものは、一番愛している男の子供を産みたいという気持ちがある。
心の奥にある躊躇が詩織達の夫婦仲に僅かに陰を落としていた。
そんな時、残業があり、凪の自分に向けられた何気ない、そして打算のない優しさに、昔からの気持ちがよみがえってしまっていた。
守り続けていた詩織の心の中のダムを、呆気なく決壊させてしまった。
ずっと心に秘めていた望みが叶ったのだ。
後悔などしない、唯にはすまないと思うが、もう絶対に凪を離さない。
そう心に誓っていた。
つづく
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