翌朝、妻は7時過ぎに起床すると、昨夜のことは忘れたかのように主婦の顔に戻っていた。
ニットの黄色のセーターにデニムのワイドパンツという、いかにもその辺の主婦、という出で立ちだ。
昨夜、豹変した雌の顔等は微塵にも感じさせない。
妻は昨日使った食器を食洗機に入れて、大量のバスタオルを洗い始めた。
妻「パパ、カーペットとソファーカバー、コインランドリーの大型洗濯機で洗ってきて。」
私「え?朝イチから働かせるなぁ。」
妻「ちゃんと働く気あるのか?さてはやる気ないな?」
妻は我が家で一番の権力者だ。
私も子供も誰も逆らえない。
妻「私子供達迎えにいかなきゃいけないんだから、ちゃんと手伝ってよ。朝ごはん作らないぞ。」
私「はいはい。分かりました。」
妻「返事は1回でしょ!」
妻はソファーカバーを外しながら除菌スプレーをリビング中に撒き散らしていく。
しまいには、動きの遅い私にもスプレーをかけてきて、早く仕事をするように追い立ててきた。
私は妻の外したソファーカバーとカーペットを近所のコインランドリーの大型洗濯機に持っていき、お金を入れて回し始める。
一応せっかくなので、ダニ退治のコースも追加しておく。
所要時間を見ると70分と表示されたので、私は一旦帰宅した。
家に帰ると、妻はリビングに掃除機をかけていた。
一度動き始めると手際よく家事を終わらせていく妻に、改めて驚きを覚える。
結婚当初は手際も悪かった妻だが、三人の子供の出産を経てかならスキルは上がっている。
掃除機をかけ終えると、妻はリビングの床に雑巾をかけて、もう一度除菌スプレーを撒いた。
ようやく妻は朝食の準備を始めた。
ウインナーに目玉焼き、ご飯に味噌汁と、のりの佃煮、いつもの朝食メニューだ。
妻は、キッチンにあった、昨日吉田社長の持ってきたワインの残りを流し台に一気に流し捨てた。
私「あれ?それ高いやつだよね。」
妻「みたいだねぇ。30万だから、高いかも。」
私「いいの?捨てちゃって。」
妻「こんなもんいらないでしょ。あのエロ社長、ワインやら焼酎やら色々飲ませやがって。飲む側の気持ち考えろよ、って思った。」
私「うまかったの?」
妻「よく分かんない。私、ワイン好きじゃないし。」
私「そか。俺もワインは飲まないし、いらないな。」
そう言いながら、お互い席に着き、二人きりで朝食を食べた。
私は妻の顔をじっと眺める。
妻「なにー?」
私「いや、なんでもない。」
妻「じゃあ、見ないでよ。」
私「ごめん、ごめん。」
こうして普通に妻を見るのが、何だか久々すぎて、私は改めて妻を惚れ直していた。
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