部屋には沈黙の時間が流れる。
おそらく、妻は吉田社長に脅された。
私だけの責任で済む問題ではない、と。
いくら寝取られ願望のある私でも、実際にその状況に置かれると、こればかりは望まない形であった。
吉田社長のやり方の問題もあるのだと思う。
しかし、今、同僚達の知らないところで、全ての問題を解決することが出来るのは妻をおいて他にいない。
女、という武器を用いて。
私一人が責任を取れば済むならば、妻は私と共に転勤を受け入れるだろう。
しかし、他の人間が巻き込まれることだけは、妻は受け入れないだろう。
今程、自分の無力さを思い知り、それを悔やんだことはない。
しかし、結果が全てなのだ。
過程や努力を重視したところで、結果が出なければ意味がない。
しかも、それが会社にとって損害を与える結果など許されるはずがない。
私には、全てを背負いきることは出来ない。
妻は、それを知っていて、私のために自分の体を差し出すことで私を支えようとしてくれているのだ。
長い沈黙を経て、私はとうとう禁断の言葉を口にする。
「今の仕事を少しでも早く終われるように全力を尽くすから、それまでの間、俺と家族のために、吉田社長に求められたら、彼と一緒に寝てもらいたい。お願いします。」
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