ドアを開くと、妻は布団を頭から被っていた。
私「ぉーぃ。」
私は小声で声をかけた。
それでも、妻は起き上がらない。
私は病室の椅子を寄せて座る。
ガバッと妻が起き上がった。
私はビックリして椅子から転げ落ちた。
妻「あははっ(笑)パパびっくりしすぎ!(笑)」
私「いや、いきなり起きたらビックリするだろ!」
妻「そういうところだよね(笑)ビビりだから(笑)だから、一郎も二郎もビビりになっちゃうんだよ(笑)」
私「まぁ、ビビりは否定しないけどな……。」
妻「あー、おかしい(笑)で?子供達は?」
私「んー?やばいな、やつら。」
妻「そんなの分かってたでしょ(笑)」
私「まぁなぁ。本格的に家事初めてやってるけど。ママ大変だな。」
妻「ようやく専業主婦の大変さが分かったか。」
私「参りました。」
妻「そういえば、クリスマスプレゼントは?」
私「買ってきた。一郎がポケモン、二郎と三郎が仮面ライダーのベルト。」
妻「ちゃんと、勉強させてからゲームさせてよ。」
私「うん。分かってる。体調は?」
妻「え?全然大丈夫だよ。むしろ暇なくらい。」
私「そっか。」
妻「仕事の方は大丈夫なの?休み?」
私「あぁ。全然大丈夫。今年一杯休み。あとさ、吉田社長、辞めさせられたみたいで。」
妻「吉田社長?誰それ?」
私「ん?」
私は少しだけ絶句してしまったが、直ぐに気を取り直した。
私「あ、あぁ……いや、取引先の社長さん。」
妻「そうなんだぁ。ふ~ん。」
私「まぁ、とりあえず、ゆっくり休んでてよ。」
妻「うん。分かった。」
私「じゃあ、今日は帰るね。」
妻「気を付けて。」
私は妻に別れを告げて、病室から出た。
廊下に担当医がいたので、私は声を潜めて話しかけた。
私「あの……妻の記憶が…」
遥香「あぁ。全然問題ありませんよ。むしろ、その方がいいんです。心を守るために、記憶の書き換えがあるのは、自分を守ろうとしている証拠ですから。」
私「そうなんですね。」
遥香「それより重要なのは……いぇ。これは医師である私が考えることだから、いっか。多分、今日の様子見る限り、年内には面会出来るようになるんじゃないかしら?」
私「あ、そうなんですね。分かりました。」
遥香「とりあえず、今はこちらで精一杯治療しますので、お任せ下さい。」
私「よろしくお願い致します。」
私は医師に頭を下げて、病院を後にした。
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