金曜日の夕方。
私はプロジェクトチームを連れて課長と共にI社へ言った。
高橋さんから、I社の社内ネットワークに接続するパスワードキーを受け取り、新システムをリンクさせていく。
各担当者が、システムの不具合の確認に取りかかる。
確認作業の間、高橋さんが私に声をかけてきた。
高橋「Kさん。私、年内でこの会社を退職することにしました。」
私「えぇ!?その後のことは?」
高橋「まだ決めてはいませんが、四国の実家に帰ります。」
私「あ、四国の出身なんですか。」
高橋「そうなんです。私が香川で妻は愛媛。東京で仕事を始めた時に出会って、四国出身同士で仲良くなって、私が自営を始めるのを機に結婚したんです。」
私「そうなんですか。」
高橋「妻に、仕事を辞めて四国に帰るのを提案したら、賛成してくれました。」
私「ということは、来年には?」
高橋「そうですね。幸い、妻の実家が広くて部屋が余ってるので、お正月には引っ越そうかと。そこから、新しく家を探します。家は元々借家でしたから、ローンもないし。」
私「そうなんですか。まりんちゃんも環境変わってしまうんですね。」
高橋「まぁ、まだ小さいですから。それに、親の近くなら、まりんにも会いやすいですからね。」
私「妻も、寂しがる……のかな。」
高橋「うーん。逆に私達夫婦は、もう奥様の前に姿見せない方がいいかもしれません。」
私「それは、どうか分かりませんが。」
高橋「いぇいぇ。絶対にそうですよ。」
私「まぁ、妻に聞かれたら引っ越した旨は伝えておきますよ。」
高橋「もし、大丈夫そうなら、妻共々、心から謝罪していた、とお伝え下さい。社長に脅されていたとは言え、私の弱さが今回奥様を巻き込んでしまって……」
私「いや、高橋さん達も、吉田社長に長年苦しめられていたんですから。」
高橋「そう……ですね。今回の一件で私達夫婦は解放されました。」
私「良かったと思います。そういう意味では、妻は高橋さん達も救えたんですね。」
高橋「本当に感謝の言葉だけでは足りないくらいです。」
私「奥様にも、よろしくお伝え下さい。」
高橋「あ!そういえばっ!」
高橋さんは私の腕を引っ張り、誰もいない場所へと私を連れていった。
高橋「以前、頂いたDVDなんですが……」
私「ん?あぁ!!」
高橋「妻には内緒で隠し持っていますが、処分しますね。」
私「あー……そう…ですね。内容見ました?」
高橋「えぇ。言い方悪いですが……ばっちりと。衝撃的な内容でしたが。」
私「いやー。そうですよね。聞きづらいことですが、もしかして?」
高橋「お恥ずかしいながら……。相手が吉田社長だというのは腹立たしいですが、奥様のシーンが……」
私「ですよねー。私も実は高橋さんの奥さんのシーンで……何回か。すみません。」
高橋「いやいや。男なら、当然かと。むしろ、妻でしてもらえるなんて……」
私達はお互いに顔を見合せて、苦笑いしてしまった。
すると、作業現場から私を呼ぶ声が聞こえたので、私達は真面目な顔に戻り、二人揃って元の部屋へと戻った。
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