会社に戻ると、私は部長と共に社長室へ通された。
部長「社長、I社は契約通りの金額を支払うと申し出てきました。」
社長「そうか……」
そう言うと、社長は立ち上がり、私に頭を下げた。
社長「今回の一件、本当に君達にすまないことをした。」
私「えっ………と。」
私は社長や部長が何のことを言おうとしているのか予想はついていたが、知らないフリを突き通した。
社長「今回の一件、弁護士を頼むならば、全てうちが負担しよう。」
私「はぁ………何のことだか、分かりませんが。」
部長は突如土下座する。
部長「すまない!高橋君から、この1ヶ月のことを聞かされたっ!私は吉田という人間の悪い噂を知っていたにも関わらず、それに気付いてやれなかったっ!」
私「ちょ、ちょっとお待ち下さい!お願いですから!」
社長「全ては私の責任だ。」
相変わらず社長は頭を下げ続けている。
私「いや。もう、本当に頭を上げて下さい。それから、これは、社内で誰か知っているのですか?」
社長「私と山本部長だけだ。」
私「ならば、お願いですから、私達夫婦のことは、そっとしておいて下さい。妻も、今全力で戦っていますから。家族や、私の同僚達のために倒れてしまうくらいにっ!!今、私達に必要なのは時間です。今の妻は、これ以上今回の件に触れたら壊れてしまうくらいになっているんです。だから、お願いですから、何も構わないで下さいっ!」
私は泣いていた。
どうして妻は……
こうなる結果だったなら、何のために……
今更時間は元には戻らない
あの女性医師が言った言葉が胸に突き刺さる。
社長「本当にすまない……治療費については心配しないでくれ。プライバシー保護のため、保険適用なしで治療を受けられるように私のところに請求がくるよう、病院に話しておく。」
私「そうですか……ありがとうございます。金曜日のシステム導入までは責任を持って仕事させていただきます。それが妻が望んでいたことですから。ただ、来社からは、暫くお休みを下さい。家族のために時間を使いたいんです。」
社長「分かった。それも、きっちり面倒を見よう。」
私「ありがとうございます。」
私は頭を下げて、社長室を後にした。
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