妻と高橋さんがリビングから出ていき、私は吉田社長と二人きりになった。
吉田「気遣いも出来ていい奥さんじゃないか。」
私「ありがとうございます。妻もそれを聞いたら喜ぶと思います。」
吉田「私も悦びたいところだね。」
私「…………。」
吉田「高橋君から聞いていないかね?」
私「聞いております。」
吉田「ならば話は早い。今のままだと新システム導入まで1ヶ月遅れると、うちも、3000万の損失を計上せざるを得ない。」
私「失礼を承知でお伺いしますが、金額に根拠はあるんでしょうか?」
吉田「ははは。そんなものは、日々の業務からいくらの損失が出るのかなんて経理や弁護士が連携して出しているよ。それよりも、いいのかね?うちと争うならば私は構わない。」
私「そんな滅相もございません。」
吉田「だろう。うちも曲がりなりにも、大手の一つだ。お互い争ったところで、そちらの落ち度にはかわりない。」
私「おっしゃられる通りです。」
吉田「だから、私は君の奥さんの体で払えと言っている。3000万ならば充分な額だと思うが?」
私「全ては、妻次第です。」
吉田「いや、奥さんは絶対拒否出来んよ。旦那を愛してるならば尚更ね。」
私「…………。」
吉田「私がその愛情の一部を分けてもらうだけだ。」
私は敵に回してはいけない男を敵に回してしまった。
こういう男は自分の欲望のためならばなりふり構わず襲いかかってくる。
そして、私も妻も、そんな野獣のような男に食われようとしているのだ。
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