ゆっくりと私が目を覚ますと、視界には白い天井が広がっていた。
私「あれ?私……」
「ん、気付いたみたいね。」
一人の女性がカーテンを開いてきた。
私「あ!」
私は見覚えのある顔だった。
首から下げられた顔写真付きのIDカードを見ると、そこには
【産婦人科】日下部遥香
と書かれていた。
私「遥香さん!」
遥香「しーっ!動かないで。それにあまりきやすく名前も呼ばないでね。今は私はあなたの主治医なんだから。」
私「あ、はい。私、どうしてここに?」
遥香「んー。ご主人とお友達の人に連れてこられたのよ。顔見た時、ビックリしちゃった。」
私「主人が……」
遥香「最初、ご主人から妻です、って言われた時、大和さんじゃないんだ、って思ったけど、あなたもやるわね(笑)」
私「あ…!それはー……」
遥香「大丈夫。何も言ってないから。」
私「ありがとうございます。」
遥香「しっかし、本当に偶然ね。たまたま月に数回のバイトで臨時当直してた私のところに来るなんて。普段なら私、この病院いないのよ。ただ、この病院、産婦人科もやってて、研修医のころからお世話になってた病院だから、今もたまに来るのよ。」
そう言いながら遥香さんは、私の血圧を計り、首筋や下腹部に手を当てた後、聴診器で胸の音を聞いたりした。
遥香「幸い、体に問題はないみたいね。それに卵管結紮もしてあるみたいだから、多分妊娠はしないと思う。でもね卵管結紮してるから100丈夫って訳じゃないから、薬は飲んでおいて。」
私「え?そうなんですか?」
遥香「そうよ。だって、生理は来てるでしょ?生理がある以上は妊娠のリスクは常にあるのよ。それにその場合は、子宮外妊娠のリスクが高いから、安心しちゃダメよ。妊娠しなくなるのは子宮摘出した時だけ、って思ってちょうだい。」
私「そうなんですね。でも、私そんなに?ちょっとよく思い出せなくて。」
遥香「思い出さなくていいわ。本来なら警察に通報するケースなんだけど、ご主人は貴方の意思次第って。何か色々事情ありそうな顔してたわ。」
私「あ、警察はいいです。家族のために自分の意思で決めたことなんで。ただ、今日のことよく分からない…」
遥香「それでいいの。無理しちゃダメよ。」
私「そう……ですか。」
遥香「ただ、主治医として言わせてもらうわ。明日から1ヶ月私の働いている病院に入院してもらいます。」
私「そんな!?でも、体には…」
遥香「体にはね。但し、これは私の医者としての診断です。入院して下さい。ご主人には私から話をしました。」
私「そう、ですか。」
遥香「少なくとも、暫くセックスはしちゃダメ。」
私「主人……の会社大丈夫かしら。」
遥香「それは、ご主人が何とかしなきゃダメなことなんだから。何故あなたがそんな無理しなきゃいけないの?」
私「家族だからです。」
遥香「家族なら、尚更、Yさんにはドクターストップです。」
私「分かりました。先生。」
遥香「よし(笑)いい子ね(笑)明日は私が一緒に病院まで連れていってあげるから、今日はこの病院で休んでちょいだい。」
私「あ、ちなみにここは?」
遥香「え?そこ!?(笑)ここは、貴方の住んでる隣の市にある◯◯中央病院。ここら辺では、ここしか緊急の産婦人科やってる病院はないんじゃないかしら。」
私「あぁ。分かりました。」
遥香「さて。ご家族に説明しないと。点滴補充させるわ。今日はとりあえずゆっくり休んでて。」
私「分かりました。」
そう言うと、遥香さんは診察室から出ていった。
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