梢さんの車が最寄り駅に着いた。
吉田「しかし、高橋君の話はビックリしたなぁ。自社ネットだからと安心していたが、やはり外部からメールが送られてくると危ないんだな。大事に至らなければいいが。まぁ、明日報告を聞くとしよう。Y君、また連絡する。今日聞いた電話番号でいいんだよな?」
私「そうです。連絡お待ちしてます。」
吉田「では、また。梢君も。」
梢さんは、吉田社長の挨拶に一切答えることはなかった。
吉田社長は鼻で笑いながら車から降りると、駅のエスカレーターを登っていった。
私「あー!少しくたびれちゃったな。」
梢「すぐに帰りましょう。」
私「梢さん、怒ってるの?」
梢「ええ。あの鬼畜社長にね。」
私「そうなんだ。まぁ、確かに鬼畜だね(笑)」
梢「Yさんは平気なの?」
私「んー?平気だよ。むしろ、あれ位じゃなきゃ。」
私はホテルのことを思い出すだけで、ジワリと下半身が熱くなる。
梢「Y……さん?……じゃないみたい?」
私「何言ってるの(笑)私よー(笑)」
梢「何だか……変よ…」
梢さんは私の違いに気付いたようだ。
けれど、これも間違いなく、私だ。
ただ、女の欲望が少し強いだけの。
やがて、車は自宅前に着いた。
何故か少しだけ心臓の鼓動が早くなった。
梢「着いた。さ!旦那さんも、お子さんも待ってるわよ。」
梢さんの言葉を聞いた瞬間、鼓動が早くなる。
全身の血流が早まるのが分かる。
嫌だ………
私は中々車を降りないでいると、梢さんが声をかけてきた。
梢「Yさん?大丈夫?顔色悪いよ。」
私「うん……大丈夫。ただ…家に入りたくない。」
梢「ダメよ。帰らないと。家族が待ってるんだから。」
また梢さんの言葉に私は拒絶反応を示す。
私「私、家族なんて……いないっ!」
梢「ちょっと……そんな!」
私「いやよっ!!!」
私は助手席のドアを開いて逃げだそうとした。
ドンッ
私は誰かとぶつかった。
見ると、そこには懐かしい顔があった。
高校の頃、何故か突然告白してきて、何となく気になるようになってしまい、付き合うようになった。
付き合ってからも、結婚したい、としつこくプロポーズしてきて、とうとう私が根負けした男。
別にセックスだって、上手くないのに、それでも、私の体に飽きずにセックスを求めてくるから、仕方なく相手をしてあげて、私のことをずっと退屈させていた男。
本来なら捨ててしまっても良かったのに、理由は分からないけれど、それでも私はこの男に根負けして結婚した。
「ママー!お帰りーっ!!」
家から三人の子供達が出てきた。
子供達を見た瞬間、涙が自然と頬を伝う。
私「パパ……」
そう言った瞬間、私の頭は真っ白になり、気を失った。
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